フランスの文化遺産を訪ねて
酒 井 寿 紀
目次 ベースキャンプ方式で(本ページ)
ベースキャンプ方式で
払い戻し不可
フランスは過去に3回行ったが、西の方には行ったことがなかったので、一度行ってみたいと思っていた。こっちの方にも、絵を描きたくなるような古い街並みが残っていそうだ。
例によって、国際線が入っている都市をベースキャンプにして、そこから日帰りで何箇所か訪れることにした。毎日のように重たい荷物を引きずって、ホテルを転々とするのは、老身にこたえるからだ。そこで、フランス南西部最大の都市であるトゥルーズを第1の拠点にして、カルカッソンヌ、アルビ、カオールに行くことにした。これらの町は何とか日帰りできそうだ。ボルドーも行ってみたいが、遠すぎるのであきらめることにした。
パリには前にも行ったが、世界遺産のフォンテンヌブロー、プロヴァンには行ったことがないので、パリを第2の拠点にすることにした。パリ市内にも絵になるところがいくらでもあるし。
ヨーロッパの気候がいい5月末から6月にかけて、トゥルーズとパリに、それぞれ5泊することにした。安い航空券を手に入れるため、3月に詳細日程を決め、飛行機とホテルを予約した。今から5年前の2007年のことである。例によって、同行者は海外旅行中だけはおとなしく付いてくる女房だ。
最近はインターネットでホテルの設備などを詳しく調べられ、価格も比較できる。今回は米国のTravelocityという旅行サイトの価格が一番安かったので、このサイト経由で予約した。
ホテルの価格は、条件によってさまざまだが、トゥルーズのホテルは払い戻し不可の一番安いものにした。これが後で大問題になる。
「頑張ります」
こうして、飛行機とホテルの予約も済ませた4月の半ば過ぎ、突然身体に変調を来たした。熱が40度以上に上がり、脚にまったく力が入らず立ち上がれなくなった。これはただ事ではないと、かかりつけのお医者さんに頼んで、取りあえず病院に入院させてもらうことにし、生まれて初めて救急車に乗って病院まで行った。
入院すると、さらに全身が赤く腫れ上がり、顔の腫れが左右非対称のため、四谷怪談のお岩さんのような顔になり、血液検査の数値にも通常より1桁以上高くなっているものがあった。
病院なのであらゆる検査をしてくれたが、どうしても原因が分からず、解熱・鎮痛剤と消炎剤の服用を続けていたら数日で症状は治まってきた。結局3週間入院したが、原因は遂に分からずじまいで、対症療法だけで快癒した。この時は、現代医学の限界と自然治癒力の重要さを改めて痛感した。
小生の担当は若い女医さんだった。「実は5月末にフランスに行くことになっているので、何とか間に合うようにお願いします」と頼むと、「頑張ります」とのこと。お陰で退院後は何事もなく、半月後には予定通りフランスへ出発できた。