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トゥルーズ

大西洋と地中海をつなぐ町

トゥルーズはスペイン国境のピレネー山脈に近い、フランス第4の大都会だ。現在エアバスの飛行機工場がある。

トゥルーズは大西洋と地中海のほぼ中間にあり、ガロンヌ川で太平洋につながり、ミディ運河で地中海につながっている。空港から町に行くとき、一時運河に沿って走る。木々の緑が水に映えて美しい。ミディ運河は世界遺産になっている。

大西洋と地中海が川と運河でつながっているということは、フランスの国土がいかに平らかということだ。もっとも、ライン川とドナウ川も運河でつながり、北海と黒海が水路で行き来できるので、ヨーロッパ全体がアルプス山脈などを除き極めて平らなのだ。

トゥルーズでは街の中心部のキャピトル広場に面したホテルに泊まる。このホテルでよかったのはインターネットの無線LAN接続が無料で使い放題だったことだ。キャピトル広場は非常に広く、市場が開かれる日は大テント村になる。

「ルーベンスはどこ?」

オギュスタン美術館というところへ行った。1415世紀に建てられたゴシック様式の修道院を1793年から美術館として使っているという。元修道院のため、立派な回廊がある。

修道院の広い部屋の周りに絵が飾られている。他には来訪者がまったくいない。ルーベンスがあるというので、探しながら一通り見たが、薄暗く、説明書きが小さく、どこにあるのか分からない。

修道女の身なりをした年配の女性が二人で立ち話をしていたので、「ルーベンスはどこですか?」と尋ねると、はるか彼方を指差す。そこにはキリストが両腕を挙げて磔になっている絵があったので、「これ?」と両腕を挙げて身振りで示すと、そうだとうなずくので、もう一度近くへ行ってよく見た。

他の画家はともかく、ルーベンスぐらい大きく表示してあるかと思ったが、そうではなかった。ルーベンスであろうと誰であろうと、静かにひっそりと展示してあるところがヨーロッパの古い美術館らしくて気に入った。

「イタダキマス」

昼食はもちろん、夕食も簡単に済ますことが多かったが、1回だけホテルの近くのちょっとましなレストランに行った。出てきたウェイターはかなり流暢な英語を話した。前にはなかなか英語が通じず、英語で予約の電話を入れると、「フランス語を話せ!」と言われて戸惑ったこともあった。しかし、最近は英語を話す人が増えて助かる。やはり、英語が国際共通語になってゆくのだろう。

このウェイターがメインディッシュを持ってきて、「イタダキマス」と日本語で言うので驚いた。日本人の旅行者も来るだろうから、片言の日本語を話す人がいても不思議はない。また、最近は日本に旅行で来た人もいるだろう。しかし、こういう人たちは、ヨーロッパの言葉にない「イタダキマス」は知らないはずだ。「どこで日本語を習ったのですか?」と聞くと、ニヤッとして、「私のガールフレンドは日本人なのです」と言う。ガールフレンドと言っても、相当親しい間柄なのだろう。これを聞いてやっと納得がいった。「イタダキマス」は日本式の生活をしてないと出てこないはずだ。

 

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