物量作戦でリリースを乗り切る

汎用のOSをまったく新たに開発するということは、ソフトウェア工場にとって久し振りなことだった。途中で開発方針の軌道修正もあり、設計部門は大変な苦労をしていた。

M-630の出荷開始にあわせてVOS Kをリリースする目標で開発が進められていた。ところがリリース日程が遅れそうだとソフトウェア工場から連絡が入った。新機能が多いため、確認する項目が多く、最終検査の日程が足りなくなってしまったとのことだった。

われわれに協力できることは何かないかと聞くと、検査用の装置の台数を増やせれば少しは短縮できると言う。神奈川工場は出荷に備えて装置をたくさん仕込んでいたので、その要求に応えるのはたやすいことだった。早速要求された台数をソフトウェア工場に貸し出した。

するとしばらくして、もっと欲しいと言ってきたので、また言い値通りの台数を貸し出した。

こういうことを確か3回ぐらい繰り返し、合計10数台を貸し出したように思う。最後はソフトウェア工場に装置の置き場所がなくなってしまい、空き部屋をつぶしてM-630を並べていた。

当時ソフトウェア工場の技術部長をしていた芝田寛二さんには、いつもこっちが恐縮するぐらい辞を低くして頼まれた。こういうことになったのは決して彼の責任ではなかったが、役職上致し方ないことではあった。

そして何とか無事リリースに漕ぎ着け、彼には大変感謝された。


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