従来は、汎用コンピュータのシステムはユーザーごとに専用のアプリケーション・プログラムを開発するのが普通だった。いわばオーダーメイドである。しかし、コンピュータがどんどん安くなり、中小ユーザーに入り出すと、アプリケーション・プログラムの開発費の割合が増え、その負担が困難になった。たとえユーザーが費用を負担してくれても、メーカーにとって開発要員の確保が困難になった。
そこでいろんな業務やいろいろな業種用のアプリケーション・プログラムを事前に揃えておき、その中から自社に合ったものを選んでもらうようになってきた。いわばレディーメードである。自分の体形に合った既製服を選ぶのと同じである。
M-620/630にとっても、数を売るには、この既製服の品揃えが重要だった。給与計算、財務会計等の標準的業務を処理するパッケージを揃え、また、製造業、流通業等、各業種向けのパッケージを順次揃える計画を立てた。これらのパッケージはBISHELPと呼ばれ、情報システム工場の国枝 壽さんらが中心になって開発を進めていた。
問題はハードウェアが今後変わっていくことが予想されたことだった。汎用の小型機も変わっていくと思われたが、その前に端末装置が標準のパソコンに取って代わられるだろうと思われた。
そうなった時、アプリケーション・プログラムを全部作り直さないといけないことになったら大変だ。
「端末がパソコンになっても使えるようにしておいて下さいよ」
と、私は国枝さんにお願いした。その点は充分考慮しているとのことだった。
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