ACE-1の開発

M-620/630の開発が片付くと、すぐ次期製品の開発にかかる必要があった。次期製品の最大の課題はDIPSとCPUのLSIを共通にすることだった。

すでに上位機種のM-660ではDIPSとの共通化が行われ、技術上の問題は分かっていたが、1 LSIのCPUでこれを実現するのははじめてだった。

このCPUの開発はDIPSの世界を熟知していた池田公一君にやってもらうことにした。彼はこのLSIをACE-1(Advanced CMOS Engine)と名付けてくれた。

このCPUにはCMOSのフルカスタムのLSIが使われ、その開発は、デバイス開発センタの他、中央研究所、日立研究所が動員されて、「特研」体制で進められた。われわれの部では、山際 明君にCMOS技術の推進役をやってもらった。

 

神奈川工場でのCMOS技術の開発は、従来DIPS設計部が中心になって進めていた。この部がDIPSの小型機のCPUにはじめてCMOS LSIを使ったためだった。ここでもDIPSは技術開発の牽引車として重要な役割を演じていた。

しかし、もはやCMOSはわれわれの部の製品だけに使われる時代ではなくなっていた。すでに、いわばイージーオーダーのようなCMOSのゲートアレイについては、全部門に対するサポート部隊である部品設計部が担当していた。しかし、完全なオーダーメイドであるフルカスタムのCMOSについては依然として山際君達が担当していた。

どの製品につても今後CMOSがますます重要になってくると思われた。そこで、CMOSの部隊を強化するため、89年に山際君の部隊に部品設計部に移ってもらい、両部隊を合流させて強化することにした。

 

このACE-1は92年に出荷が開始されたM-840に使われ、またそのエンハンス版は95年に出荷された後継機のMP-5400に使われた。2世代に渡って働いたことになる。


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