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ポンペイ
貴重品を見損なう
ナポリ滞在の2日目はポンペイに行った。
ポンペイに行くに当たって事前に少し調べてみた。紀元79年のヴェスーヴィオ山の噴火で20mの火山灰に埋まり、16世紀に再発見されるまで、そのままの状態が保たれていたという。そのため、壁画などが当時のままの状態で見られる。
「ヴェッティの家」の壁画には、巨大なイチモツを持った、ほぼ等身大の男が描かれているという。こういうたぐいのものは日本の浮世絵にもあるし、世界中のどこにでもある。私が驚いたのは、それが玄関に飾られていたということだ。玄関は子供も見るだろうし、女性の来客もあるだろう。一体どんな具合に展示されていたのだろう?
これは是非実物を見てみたいと、ヴェッティの家を捜した。しかし、これがなかなか見つからない。持っていた地図はいい加減だし、現地の道路には分かりやすい表示がない。やっと捜し当てると、その家は修理中で閉鎖されていて、中に入ることができなかった。
後でナポリの国立考古学博物館に行くと、そこにはこの種の作品ばかりを集めた「秘密の部屋」があるという。ポンペイの住宅や売春宿の壁に描かれていたベッドシーンなどが展示されているという。ポンペイで見られなかったため、ここで見ようと思ったが、何とこの部屋も修理中で閉鎖されていた。
こういうたぐいの絵や彫刻に、日常生活のあちこちで出会えるようになっているのが人間本来の姿で、キリスト教や近代文明がそれをゆがめてしまったのかも知れない。それをポンペイで確かめようと思ったが、残念ながら叶わなかった。
「これが人生だ!」
ポンペイの遺跡の中のレストランで昼食をとっていると、「イソガシイ、イソガシイ! コレガジンセイダ!」という日本語が後ろから聞こえてくる。振り返ると、イタリア人のウェイターが、走り回りながら言っているのだ。聞いてみると、1972年の札幌オリンピックの時、日本に来たのだそうだ。その後、よくポンペイに来る日本の大学の先生と知り合いになったという。我々が日本人に見えたので、わざと聞こえるように言ったのだろう。イタリアにもいろんな人がいるものだ。
その後、パレルモの街で偶然飛び込んだレストランの主人は、弟が新婚旅行で日本に行ったと言っていた。こういう一般市民レベルでの交流が増えることは、国家間の理解を深めるのにも有益だ。