フィレンツェから日帰りでピサに行った。フィレンツェを流れるアルノ川に沿って鉄道で約1時間行くと、地中海の河口に近いピサに着く。列車は各駅停車で、田園地帯をのんびりと走る。
ピサでは何はともあれ有名な斜塔を見に行った。
斜塔はドゥオーモや洗礼堂とともに市街地の外れの城壁のすぐ側にある。斜塔はもともとドゥオーモに付属する鐘楼として建てられたものだろう。
これらの建造物があまりにもきれいなのに先ず驚いた。他にあまり産業もなく、観光が最大の収入源なので、金をかけてピカピカに磨いているのだろうか? 確かに、町が小さく、静まり返っているわりには、この一角だけは観光客と土産物屋でごったかえしていた。
しかし、このように人工的にきれいにしたのはあまり好きではない。自然のままに古びていた方がいい。
斜塔は今にも倒れそうで痛々しい。基礎を補強し、倒れそうな方向と反対の方向に鉄のワイヤで引っ張っている。大変な騒ぎだが、これが倒れるとピサの町も倒れてしまうかも知れない。
駅から斜塔へ行くときはバスで行ったが、戻るときは街並みを見ながら歩いた。
駅へ向かう道には何100メートルにも渡って、露天商が店を並べていた。露天といっても大型のテントのかなり本格的な店である。売っているものは、日用雑貨、アクセサリー、古道具、古本、古レコードと実にさまざまである。
古本といっても、何10年も店先に置いてあるようような、ボロボロで手に取ったらバラバラに崩れそうな本が並べてある。こんなものを買う人がいるのだろうか? 店屋はいっぱいあるが客はほとんどいない。店屋の人はみんな手持ちぶさたで暇そうだ。商売が成り立っているような気がしない。いったいどうやって食べているのだろうか?
こっちは他人事ながら心配になるが、彼らはいたってのんびりと隣同士でペチャクチャやっている。
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