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パリあちこち

雨の日は美術館へ

土砂降りのパリ

快晴続きのカンヌからパリへ移動すると、翌日は土砂降りだった。朝、滞在していたオペラ座の近くのホテルから出かけたが、あまりの雨のひどさに近くのアーケードに飛び込み、小降りになるのを待つことにした。そこでは、先生に引率された小学生の団体も雨宿りしていた。誰も傘など持ってないので、全身ずぶ濡れだった。少々の雨なら、傘なしで平気で歩くフランス人にも、さすがにこの雨はひどすぎたのだろう。

パリにはこういうアーケードがいくつもあり、パサージュ(passage)と呼ばれている。建物の1階が通路になっていて通り抜けられるものだ。通路の両側が店屋やレストランになっているところも多い。我々が飛び込んだのはパサージュ・デ・パノラマ(Passage des Panoramas)というモンマルトル通りに面したパサージュだった。しばらく雨が止みそうもないので、ここで1枚絵を描くことにした。このパサージュには、ミシュランの星を持っているレストランや切手商の店などがある。

 

ドラクロワ美術館

パサージュ・デ・パノラマで小さい絵を1枚描いたが、まだ雨が止まないので、外でのスケッチをあきらめ、ドラクロワ美術館に行くことにした。この美術館はサン・ジェルマンの教会の近くにあり、昔ドラクロワが住んでいた家を美術館にしたものだそうだ。

教会の裏の細い道を入って行くと、フランスの旗が立っている家があったので、ここだろうと思ったらそうだった。何の変哲もない普通の建物に、地味な看板がかかっているだけなので、旗がなければちょっと分かりにくい。ドラクロワは、ここに1857年に引っ越してきて、1863年に死ぬまで、約6年間住んでいたという。

ドラクロワの著名な絵が何点か展示されているのだろうと期待していたが、残念ながら、展示品はごく限られたものだった。ドラクロワの絵は世界中の美術館に散在しているようで、ここでまとめて見るわけにはいかない。

雨も上がったので、建物の中庭を歩いていると、突然サン・ジェルマンの教会の鐘が鳴りだした。すぐ近くなので、全身に響くような大音響だった。教会はドラクロワの時代よりはるかに古いので、ドラクロワも毎日この鐘を聞いていたのだろう。

ドラクロワについて調べていたら、この人の生物学的父親には疑問があることを知った。政治家のタレーランだという説もあるらしい。平清盛、秦の始皇帝など、歴史上には出生に問題がある人が何人もいるが、ドラクロワもその一人のようだ。

 

「ドゥ・マゴ」でランチ

ドラクロワ美術館を出て、サン・ジェルマン・デ・プレの角にある「ドゥ・マゴ(Deux Magots)」で軽い昼食をとった。このカフェは、第2次大戦後、サルトルやボーヴォワールが実存主義の議論を戦わした場所として有名だ。

カフェはほぼ満席で、皆さんおしゃべりに夢中だ。フランス人は、とにかくよくしゃべる。

やっと席を見つけて、ビールを飲みながら、右の絵を描いた。外はすっかりいい天気になっていた。

 

モンパルナスへ

昼食後、地下鉄でモンパルナス方面に向かい、ヴァヴァン(Vavin)で降りて、モンパルナス界隈をぶらついた。そして、ヴァヴァンの交差点にあるラ・ロトンド(La Rotonde)というカフェを描いた。

第1次大戦の頃のこのカフェの常連客に、ピカソ、モディリアーニ、藤田嗣治などの画家がいたそうだ。ここは、このあたりの安アパートに住んでいた画家仲間のたまり場になっていて、お互いに刺激を受けあっていたのだろう。

パリには、もう一つの絵描きのたまり場としてモンマルトルがある。ここには、今でも怪しげな絵描きがうじゃうじゃたむろしている。過去に住んでいた人としては、ゴッホ、ロートレック、ユトリロ、荻須高徳などが有名だ。モンパルナスの画家とモンマルトルの画家にはどういう違いがあるのだろうか? それを解明できれば面白いと思う。

 

 

 

 

 

 

20年振りのオルセー美術館

パリの最後の日も朝から雨で、外の仕事(スケッチ)はできないので、オルセー美術館に行くことにした。ここは、ちょうど20年前の1993年に訪れたことがあるが、最近大改装をしたというので、どう変わったのか見てみたかったのである。

前の建屋は、駅の建物をほぼそのまま使っていて、内部の空間がガランと空いていたが、現在はフロアが多数追加されて、空間の有効活用が図られている。展示スペースは相当増えたように思う。

ちょっと気になるのは壁の色だ。前は暖色系の明るい色だったと思うが、新建屋の壁は黒っぽい青だ。決して悪い色ではなく、絵が引き立つという見方もできるが、特に印象派のような明るい色彩の絵には、前の壁の方が合っているような気がする。しかし、いずれにしても、これは好みの問題と、慣れの問題だろう。

建屋とは関係ないが、前にこの美術館でゴッホの絵を見た時の衝撃的な感動はもうなかった。やはり、芸術との出会いは、初対面が勝負のようだ。

 

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