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トラブルの連続

ホテルの目印はマリリン・モンロー

いつも、海外のホテルは、出かけるのに便利な地下鉄の駅などのそばにしている。カンヌには地下鉄がないので、国鉄の駅のそばのホテルにした。これは、もっと街の中心に近い手ごろなホテルが予約できなかったためもある。結果的には、国鉄はほとんど利用しなかったので、バス・ターミナルに近いホテルの方が便利だったようだ。

このホテルは、米国系のチェーンで、壁一面にマリリン・モンローの巨大なポートレートが描いてある。そのセンスにちょっと抵抗があったが、これも映画の都にはふさわしいのかもしれないと思った。それに、何よりこれに勝る目印はない。現に、タクシーで行くときも、「あのホテルだ」と言えば、運転手はすぐ分かってくれた。

このホテルは米国系なので、サービスはあっさりしているが実用的だろうと思っていた。しかし、ホテルの宿泊には運/不運がある。

 

スマートフォンが充電できない!

日本の普通のスマートフォンは、海外では使えない。しかし、電話やインターネットは駄目でも、カメラなどの機能は使える。小生はデジカメの代わりにスマートフォンを持ってきていた。

ホテルに着いて、電池の残量が減っていたので充電しようと思い、ふとその充電器を見ると、100Vとしか書いてない。これでは200V電源のヨーロッパでは充電できない。最近日本で売っているこの種の電気製品は、大抵100Vでも200Vでも使えるようになっているので、出発前には疑いもしなかった。この充電器は中国製だが、NTTドコモが日本の電気会社から調達して販売しているものだ。NTTドコモは何と融通が利かない製品を販売しているんだろう。

100Vのコンセントがないか、部屋中捜しまわったら、浴室のヘヤドライヤーのユニットに100Vのコンセントが付いているのを見つけた。電気カミソリ用だろう。「しめた、これで何とかなる」と充電器をつないだが、これがダメ。ヘヤドライヤーも使えないし、コンセントにも電気が来てない。

フロントに電話すると、メイドが来たが、英語が全く通じない。ヘヤドライヤーのところへ連れて行って、これがダメなんだと身振り手振りで伝えると、しばらくたって、200Vのヘヤドライヤーを持ってきた。使いたいのはヘヤドライヤーではなく、そのユニットについている100Vのコンセントなんだが、このオバチャンに理解してもらうのはとても無理だった。

実はデジカメも持ってきていて、女房が使っていた。こういう事態になったので、翌日から当面そのデジカメを小生が使うことにした。

クローゼットが開かない!

次の日、一日カンヌの街を歩き回ってホテルの部屋に戻ると、着替え等を入れてあるクローゼットのドアが開かない。どうしてもだめなのでフロントに電話すると、調べに来てくれて、

「今日は技術屋が帰ってしまったので、明日まで待って下さい」と言う。

「とんでもない。とても明日まで待てない。着替えが入っているので今すぐ開けてほしい」と言うと、すでに帰宅していた技術屋を呼び戻してくれた。

1時間ぐらいして技術屋のおじさんが来たので、どうするか見ていると、クローゼットの取っ手が付いている金具全体を取り外して、

「鍵がかかりませんが、今日はこれで我慢して下さい。明日ちゃんと直します」と言う。

これでやっと着替えることができた。そして、ヘヤドライヤーも壊れていると伝えると、

「それも明日直しておきます」と言う。

次の日の夕方、外出から戻ると、両方ともちゃんと直っていた。

この他にも、トイレのドアの鍵をかけたら、開かなくなてしまって、開けるのに20~30分かかったこともあった。あやうくセッチン詰めになるところだった。

フロントの人にも散々文句を言ったが、このお兄さんはWi-Fiの接続ではずいぶん助けてくれた。

「私も使っているので、パソコンを持ってくれば設定してあげましょう」と言うので、パソコンを持って行ったが、OSのメッセージが日本語なので、この人に直接やってもらうのは無理だった。

こういう時に限らず、OSのメッセージは英語の方がいいと思うことがしばしばある。何といっても英語のウェブ情報の方がはるかに豊富で正確だから、それを利用するときもそうだ。

設定にだいぶ苦労したが、最終的にはノートパソコンもタブレットもインターネットにつなぐことができた。

しかし、ホテルとは関係ないが、もっと深刻な問題が発生した。

 

突然携帯電話が不通に!

海外旅行時は、女房との連絡用に、いつも現地の携帯電話を2台借りて、二人でそれぞれ携帯することにしている。レンタルの携帯電話機を申し込む時、念のために「フランスの大手通信会社のものを頼みます」と書いておいた。小生の頭にあったのは、フランス最大のオレンジだったが、羽田で端末を受け取るときに聞くと、SFRという聞いたことがない会社のものだというので、ちょっと嫌な気がした。しかし、小生が知らなかっただけで、フランス第2位の会社で、パリの中心地に大きな店を構えていることが後で分かった。

カンヌで、何の問題もなくこの携帯電話で連絡を取り合っていた。小生が絵を描いている間、女房は街を歩き回っていることが多いので、絵を描き終わった頃に連絡を取るのだ。

ところが、カンヌでの4日目に突然、発信ができなくなった。呼び出し音が鳴らず、電話会社のメッセージも聞こえず、聞いたことがない機械音を繰り返すだけだった。通話相手が、電波が届かないところにいる時や、電源を切っている時の反応とは明らかに違う。

そのうちつながるだろうと、店屋で水を買って飲みながら、30分ぐらい発信を繰り返したが、状況は変わらない。この携帯が二人の唯一の通信手段で、つながらない時のことなど取り決めてないので、どうしたものか途方に暮れた。

「幸いにしてカンヌは小さい街で、絵を描いていたところからホテルまでは歩いて帰れる。カンヌにもう4日もいるので、女房も、どうしても電話が通じなければ、最後には1人で歩いてホテルに戻るだろう」と思い、あきらめてホテルに戻ることにした。

そして、腹を決めて歩き出すと、何と向こうから女房がのこのこ歩いてくるではないか。小生が絵を描いている場所がだいたい分かっていたので、もうそろそろ描き終わるのではないかと、何も心配せずにやってきたらしい。まったくはらはらさせられてしまった。

この時の障害は実に不思議な現象で、ホテルの人にも協力してもらって調べたところ、カンヌでもパリでも、我々の端末から現地の携帯電話や固定電話への発信は一切不可能、しかし日本の留守宅に電話すると、ちゃんと発信音が鳴ることもある、そして、パリに住んでいる娘の友達からの電話は正常に受信できるという、まことに不可思議なものだった。

パリへ移動後、オスマン通りのSFRの店へ行ってみたが、日本の会社がレンタルしているものなので調べられないという。店の男は英語がまったく通じず、たまたまいた英語ができる客に通訳してもらう始末で、とても詳しい話はできそうになかった。

現地ではどうしようもないので、日本のレンタル会社に詳しい状況をメールで連絡し、SFR側で何か問題が起きてないか調査を頼んだ。その会社はすぐSFRと連絡を取ってくれたが、問題は確認できないとのことだった。

さらに不思議なことに、障害発生から3日後に街で何気なく電話を使ってみたところ、障害は完全に修復していた。ホテルに帰ると、日本のレンタル会社からまたメールが入っていて、SFRから「原因は不明で、他の顧客で問題は起きてないが、念のため回線の刷新作業を行った」との連絡があったという。これが原因だったのかもしれない。

回復さえすればよく、これ以上この問題に時間を取られたくなかったので、原因追及はあきらめ、発信不能だった3日間のレンタル料を半額にしてもらって、この問題にけりをつけた。

 

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