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カンヌを根城に

映画祭の町カンヌ

英語が堪能なタクシーの運転手

ニースの空港からカンヌまでは24キロメートルほどある。バスもあるが、どうせカンヌのバスターミナルからホテルまでタクシーを使うことになるので、飛行場から直接タクシーでカンヌに向かうことにした。

小生が、カタコトの怪しげなフランス語でホテルの場所を言い始めると、運転手が、

「フランス語と英語とどっちがいいですか?」と聞くので、 「それは、英語の方がいい」と答えると、

「じゃあ、英語でどうぞ」とのこと。

フランス人にも最近は英語を話す人が増えたが、それにしてもこの運転手は流暢な英語を話すので、驚いて、

「どうしてそんなに英語が上手なのですか?」と聞くと、

前にアリアンツ(世界最大のドイツの保険会社)で働いていた。その後、学校でITの先生をしていた。そろそろ転職しようと思っていたところ、知人がタクシーを辞めるというので、その人から営業権を買い取って、1年前にタクシーを始めました、と言う。

奥さんは別の都市で学校の先生をしているそうだ。また、大学生の娘さんは日本語の勉強をしていて、いずれ日本に行きたいと言っているということだった。なかなかのインテリ一家のようだ。タクシーの運転手にもいろいろいるものだ。

ニースの空港からカンヌのホテルまでは1時間弱で、料金はチップ込みで95ユーロ(約1万円)だった。帰りは、ホテルで呼んでも空港まで同じ料金でいいというので、帰るときも電話をかけてホテルまで迎えに来てもらった。

 

元は漁港

カンヌは、今や南仏有数のリゾート地の一つで、映画祭で有名だが、元々は漁村だったという。港から小高い山に登ってゆく細い曲がりくねった坂道が旧市街のメインストリートだという。

この坂道をどんどん登っていくと、カンヌの城跡に出る。そこから東の方にカンヌの市街を一望のもとに見ることができる。右の写真の手前がカンヌの港で、その向こうの、写真の中央の白い大きな建物が映画祭の会場である。

さらにその向こうに、海岸沿いに延びている道がクロワゼット通り(Boulevard de la Croisette)で、それに沿って高級ホテルがずらっと並んでいる。映画祭の時は、映画スターが大勢この辺のホテルに滞在するのだろう。その中には、映画「泥棒成金」の舞台になったカールトン・ホテルもある。

タクシーの運転手の話によると、ホテルの値段が5月の映画祭の時は2倍以上に跳ね上がるのだそうだ。その上5月は雨が多く、観光にはあまりよくないという。我々が行った6月が一番いいと言っていた。確かにカンヌ滞在中は快晴続きで、天候には恵まれた。

 

映画祭の会場

映画祭の会場を見るのは今回の旅行の主目的ではなかったが、夜、近くで食事をした帰りに立ち寄った。映画祭の時には、左の写真の階段に赤絨毯が敷き詰められ、映画スターが次々と登場することになる。

近くの舗道には映画スターの手形が埋め込まれていた。夜も遅く暗闇の中だったが、ソフィア・ローレンの手形を見つけた。力士の手形かと思うほど力強いものだった。

 

地中海のシーフードを満喫

食事はおもに従兄弟のおすすめの店でした。外国人の観光客などあまり来ない店が多く、看板が小さくて捜すのに苦労したところもあった。ほとんどの店が、予約の電話で英語が通じたのに感心した。20年ぐらい前とは大変な違いだ。

料理はおもに、地中海の魚介類を選んだ。魚の名前が分からないのには困り、いい加減に注文したが、今回は大外れはなかったようだ。もっぱら一度しか来ない観光客を相手にしている店より、こういう、地元の客で混んでいる店の方がいい。

ラ・カーヴ(La Cave)    という小さいレストランで食事をした時、メインディッシュに鴨の胸肉を1皿頼んだ。すると、ウェイターが怪訝な顔をして、「1皿だけでいいんですか?」と聞く。われわれの胃は小さいので1皿でいいんだ、と言うと、しぶしぶ承知してくれた。実はその前々日、別のレストランでリゾットを2皿頼んだら、二人でとても食べきれなかったので、この日は少なめに抑えたのだ。

ところが料理が出てくると、何と立派な皿2枚に、鴨の胸肉が6切れずつ載っていて、それぞれ付け合わせの野菜類もたっぷり付いている。どう見ても1人分を2皿に分けたとは思えない。日本だったら1皿が立派に1人分の量だ。小生のフランス語が通じなかったのかな、と心配になってきたが、レシートを受け取ると、ちゃんと1人分になっていて安心した。ここの鴨肉は申し分なかった。ただし、量は半分で適量だった。こういう融通の利く店がいい。

 

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