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航空管制官のストに巻き込まれる

ベースキャンプはカンヌとパリ

今から1年ちょっと前の2013年6月に、フランスのカンヌとパリに行った。今回の旅行の主目的は、フランスの古い街並みの絵を描くことだった。フランスは今までに何回か行ったが、小生はやはりロマンス語系の国の方に親近感を感じるので、再び訪れることにした。

最近、ヨーロッパを旅行する時は、2か所の大都市にベースキャンプを設営して、それぞれ数日間滞在し、その間、日帰りで近隣各地を訪れることにしている。行ける所に制約があるのが難点だが、大きい荷物を持ち歩かなくていいので、この旅行方法が気に入っている。今回もこのベースキャンプ方式で、カンヌとパリにそれぞれ5日間滞在した。そこからどこへ行くかは、天気や疲れ具合を見て、現地で決めればよい。

南フランスでは、前にニースに行ったことがあるので、今回はカンヌを根城にすることにした。この辺には、ピカソ、ルノアールなどが滞在した町もあり、絵になるところもいろいろありそうだ。それに、従兄弟の映画評論家の中川洋吉さんが毎年カンヌの映画祭に行っているので、レストランはどこが安くてうまいかなど、いろいろ様子も聞けそうだ。もう1個所はパリにした。パリのマレ地区の裏通りなどは前にも描いたことがあるが、パリの裏通りにはいくらでも絵の題材がありそうだ。

旅の道連れは、相も変わらず女房だ。

 

パリ-ニース便が欠航!

カンヌの空港は小さく、定期便が入ってないので、空港はニースを使う。そのため、カンヌへ行くにはパリでニース行きの国内線に乗り換えることになる。パリまでは、今回初めて羽田発のJALにし、その先はエールフランスの国内線を利用することにした。羽田で欧米行の便に乗るのは、1960年代以来だ。

出発の前日に、インターネットで何気なくエールフランスのサイトを見ていると、フランスの航空管制官のストライキが予定されているので、フライトが影響を受ける恐れがあると書いてある。大変だ。もし欠航にでもなったら行けなくなる。

管制官のストライキなら、エールフランスだけでなく、全航空会社が影響を受けるはずだと、JAL始めアメリカ、イギリスなどの航空会社のサイトを片っ端から調べたが、そんなことは一言も書いてない。しかし、フランスのストライキの情報は、エールフランスが一番早く、正確なはずだ。他社もそのうち情報を流し出すのではと、出発間際までウェブの情報を見ていたが、他の航空会社のサイトでは何の情報もがない。JALのフライト情報で、予定通り出発予定となっているので、少なくともパリまでのJALは予定通り飛びそうだ。もう家を出ないと間に合わない時間になったので、タクシーで羽田に向かった。

羽田のJALのラウンジでJALのフライトを確認したが、予定通りとのこと。ストは取り止めになったのだろうか? 念のために、パリ-ニース便を調べてもらうと、

「欠航になってます」 とのこと。

こういうこともあろうかと、当日のニース行きの後続便をいくつもメモしてあったので、片っ端から調べてもらったが、すべて欠航とのこと。さあ大変だ。

飛行機の中で考えた。これはニースへは行けないかもしれない。前半ニース、後半パリの予定を入れ替えて、逆にすればいいのだが、個別に予約してある、飛行機やホテルの予約を全部入れ替えるのは大変だ。飛行機はやめて、鉄道でカンヌまで行く手もあるが、大きな荷物もあり、そう簡単にはいかない。どうしてもカンヌ行きが駄目なら、カンヌはあきらめて、パリだけで10泊することにするか? そんなことを考えていたら、眠れなくなってしまった。

パリのシャルル・ドゴール空港に着くと、国内線はほとんど欠航で、エールフランスのカウンターでは、乗継便の変更の客が延々長蛇の列。これでは別便に変更するのも難しそうだと思ったが、とりあえず並ぶことにした。

出発予定便のボードを見ると、予定よりちょっと早く着いたため、予約してある便より早い便に間に合いそうで、それは欠航になってない。エールフランスの責任者らしい男がいたので、

「今日中にニースに行きたいんだが、あの便に変更できませんか?」 と聞くと、何とも返事がないのでこれは駄目かと思っていたが、しばらくしてやってきて、

「あの便はもう満席で駄目だが、今日遅くニース行きが1便だけ飛ぶので、運が良ければそれで行けます」 とのこと。

 とにかく並んで、順番を待つしかなかった。しかし、ほとんどの便が欠航で、1便だけ飛べば、皆がそれに殺到するはずで、とても席を確保するのは難しいのでないかと思っていた。しかし、何とかこれに乗り込むことができた。そのからくりは・・・

管制官の ストライキといってもその参加者は半数で、半分は働いている。そのため全便を飛ばすことはできないが、一部の便は飛べる。そこで、影響が大きい国際線を優先して、国内線はほとんど欠航にしたのだ。外国の航空会社がこのストをあまり問題にしてなかったのはそのためだ。そして、エールフランスは、減便による輸送力への影響を最小限に抑えるため、エアバスの中型機のフライトを軒並み欠航にし、その代りボーイング777の大型機を1便だけ飛ばすことにしたという。中型機でも大型機でも必要な管制官の数は変わらないためだ。

こうして、ずいぶんはらはらしたが、その日のうちに何とかカンヌに入れた。午前中に着く予定が、夜遅くなってしまった。前にウィーンで夜遅く着いたら、予約しておいた部屋がなく、一晩だけとんでもなく小さい部屋に押し込められたことがあったので、パリの空港からカンヌのホテルに電話して、

「夜遅くなるが、必ず行くから」と伝えたら、 「分かりました。いつまでも待ってます」とのことだった。

 

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