ヨーロッパ今昔シリーズ (7)
ヴェネツィア今昔
酒井 寿紀
はじめに
この「ヨーロッパ今昔シリーズ」を始めたいきさつについては「パリ今昔」の「はじめに」をご覧下さい。
「現在」の写真はすべてGoogleのStreet Viewによるものです。
「約100年前」の写真はすべて当時の写真集から取ったものです。撮影日時、発行元等の記載はなく不明です。
新旧対比表
No. | 約100年前(1900~1920年頃?) | 現在(2020年) |
1 |
サン・マルコ寺院
(Basilica
di San Marco) |
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2 |
サン・マルコ広場 (Piazza
San Marco) |
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3 |
サン・マルコ寺院[内部]
(Basilica
di San Marco) |
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4 |
ドゥカーレ宮殿1 (Palazzo
Ducale) |
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5 |
ドゥカーレ宮殿2 (Palazzo
Ducale) |
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6 |
ドゥカーレ宮殿(中庭)(Palazzo
Ducale) |
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7 |
ドゥカーレ宮殿前のゴンドラ乗り場 |
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8 |
ため息の橋 (Ponte
dei Sospiri) |
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9 |
アッカデーミア橋から見た大運河 (Canal
Grande) |
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10 |
リアルト橋 (Ponte
di Rialto) |
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11 |
パラッツォ・デズデモーナ (Palazzo
Desdemona) |
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12 |
リオ・サン・バルナバ (Rio
San Barnaba) |
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おわりに
"Street" はなくても "Street View" はある!
「ヴェネツィア今昔」を作るにあたって先ず心配したのが、「ヴェネツィアで "Street View" が使えるのだろうか?」ということだった。
ヴェネツィアでは道路と言えば大小の運河で、それをゴンドラやヴァポレット(Vaporetto; 水上バス)で行き来する。陸上には運河に沿った狭い通路がある位で、クルマはまったく使えない。自家用車もタクシーもトラックもない。"Street View" は、一般に屋根の上に360度の風景が撮れるカメラを積んだ特殊なクルマが街中を走り回って撮影したものだが、ヴェネツィアではどうしているのだろうか? もちろん、ヴェネツィア以外にもクルマが入れない公園等は世界中に多数あり、そういうところでも "Street View" は使えるが、そういうところは街のごく一部で、街全体にわたって撮影用のクルマが全く使えないのはヴェネツィアぐらいだろう。
こういう心配はあったが、とにかく他の都市と同じように作業を始めてみることにした。そしてできたのがこの「ヴェネツィア今昔」である。どのようにして撮影したのかは分からないが、他の都市とあまり変わらない程度の写真が用意されている。
古い写真をよく見ると、No. 8, 9, 12等、運河に架かっている橋の上から撮ったものがかなりある。昔のカメラはシャッター速度が遅く、揺れる船上で撮影することが困難で、地上のスペースは非常に限られているため、こうならざるを得なかったのだろう。橋の中央部はゴンドラの往来のため高くなっているので、撮影に便利だったためもあるだろう。こういう場所は、 "Street View" でも使っていることが多いので、同じ地点を容易に見つけられる。
最も変化のない街
ヴェネツィアの「新旧対比表」を見てみると、今までに取り上げた都市の中で、ヴェネツィアが一番この100年間の変化が少ないように思われる。100年前との違いがはっきり分かるのは、サン・マルコ広場の街灯が少なくとも1本は減っていることぐらいだ。(No. 2)
もちろん、写真にはないが、ヴァポレットの乗り場等、この100年間に新設されたものもあり、また、リド島など最近開かれたところには新しい建造物も多いものと思われる。しかし、100年ほど前の写真集に載っている旧来のヴェネツィアの名所は、現在もほとんどそのままの姿なので驚く。この100年間「塩漬け状態」が続いたようだ。
(完) 2021年5月23日