ヨーロッパ今昔シリーズ (1)
(rev. 2)
酒 井 寿紀
はじめに
ヨーロッパの街の風景は、100年前にはどうだったのだろうか? 街角ごとに新旧の風景を並べて対比できれば、興味のある人も多いだろう。ところがこれ を、わが家にいながらにして簡単にできる可能性があることに気がついた。どうすればいいかというと・・・
100年前の風景
私の祖父酒井亀久次郎(キクジロウ)は、1884年に和歌山県の御坊に生まれ、1904年に大阪高等工業(現:阪大工学部)を卒業し、同年大阪砲兵工廠に 就職した。翌1905年から1908年にかけて、火砲の設計・製造技術を習得するため、約2年半ドイツに派遣させられた。また、第1次大戦後の1924年 から1925年にかけて、約1年半フランスに滞在した。
これらの派遣中にヨーロッパ諸国を歩き回ったようだが、当時は旅行に携帯できるカメラがまだなかったので、自分で撮った写真は1枚もない。その代り、当時 旅先で購入した写真集や絵はがきがわが家にかなり残っている。これを見るとヨーロッパの100年近く前の姿に接することができる。
現在の風景
世界中の道路から見た現在の風景をGoogleのStreet Viewで簡単に見ることができる。上記の写真集で100年前頃に写真を撮ったと思われる地点を地図で捜して、Street Viewで古い写真と同じ方向を見れば、同じ場所の現在の姿を見ることができる。もちろん問題もあるだろう。しかし、試しにやってみる価値はありそうだ。
ということで、パリについて作ってみたのが下記の「新旧対比表」である。先ずはご覧頂きた い。
新旧対比表
No. | 約100年前(1900~1920年頃?) | 現在(2020年) |
1 |
シャ
ンゼリゼ通り
(Champs-Élysées) |
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2 |
ノートルダム大聖堂 (Notre-Dame
de Paris) |
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3 |
ノートルダム(背後より) (Notre-Dame
- from behind) |
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4 |
オペラ座 (l'Opéra) |
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5 |
オペラ通り (Avenue
de l'Opéra) |
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6 |
エッ
フェル塔よりトロカデロを望む (Tour
Eiffel to Trocadéro) |
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7 |
エッフェル塔から南東を
望む (Tour
Eiffel to South-east) |
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8 |
ブルス (Bourse) |
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9 |
ヴァンドム広場 (Place
Vendôme) |
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10 |
コンコルド広場 (Place
de la Concorde) |
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11 |
ルーヴルの中庭 (Courtyard
of Louvre) |
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12 | プティ・パレ (Petit
Palais) 建物は変わらないが、木が100年分育った? |
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13 |
エトワール凱旋門 (Arc de
Triomphe de l'Étoile) |
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14 |
バスティーユ広場 (Place de la Bastille) |
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15 |
レピュブリック広場 (Place de la
République) |
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16 |
マドレーヌ寺院 (La
Madeleine) |
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17 |
パ
ンテオン (Pantheon) |
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18 |
リュ
クサンブール公園 (Jardin du Luxembourg) |
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おわりに
こうして新旧の対比表を作ってみて気付いたことに若干触れておきたい。
昔の姿を見られないところがある
最近のパリの観光客にとっての人気スポットである、モンマルトル(Montmartre)、モンパルナス(Montparnasse)、サン・ジェルマン・ デ・プレ(Saint-Germain-des-Prés)付近の写真は、私の手元の古い写真集にはまったくない。ロートレックやモディリアーニが絵を描いて いたところ、サルトルやボーヴォアールが激論を戦わせていたというカフェ等の昔の様子を見たいと思っても難しい。これらの場所が脚光を浴びるようなったのは第 2次大戦後なのかも知れない。
また、 ポンピドゥー・センター、モンパルナス・タワーのように第2次大戦後新しく建てられた建造物がある場所の元の姿は、当然ながら見ることができない。
ムフタール通り(Rue Mouffetard)、モントルゲイユ通り(Rue Montorgueil)等、庶民の生活に密着した古い通りも昔の写真集には載っていない。狭い裏通りは街の名所の写真集にはそぐわないと思ったのかも知れない。
現在の景色が見られないところもある
GoogleのStreet Viewの写真は、一般に、撮影用の専用のクルマから撮影したものだ。従って、歩行者専用道路や建物内の通路、クルマが乗り込めない広場や公園の写真はないか、あっても非 常に限定されている。
例えば、カンカンポア通り(Rue Quincampoix)から入るパサージュ・モリエール(Passage Molière)という建物内の通路はStreet Viewでは見られない。但し、モンマルトル通りから入るパサージュ・デ・パノラマ(Passage des Panoramas)は、同様に建物内の通路だが、Street Viewで左右の店を見ながら通り抜けられる。
また、ルーヴルの中庭、リュクサンブール公園(Jardin du Luxembourg)、ヴォージュ広場(Place des Vosges)等は見られる地点が限られている。(No.11 「ルーヴルの中庭」、No.18 「リュクサンブール公園」参照)
カメラの高さが違う
Street Viewのカメラはクルマの屋根の上に設置されているので、一般に地上2m前後であろう。一方、写真集のカメラは、地上1.5m程度のものが多いようだが、中には建物の2 階、3階、またはそれ以上の階から撮影したと思われるものもある。その場合、Street Viewに同位置からの写真を期待することはできない。水平位置のみ昔の写真に合わせてあるので、高さは写真を見る人が頭の中で補正するしかない。(No.15 「レピュ ブリック広場」参照)
(完) 2020年10月26日
(rev.
1) 2023年5月1日