ヨーロッパ今昔シリーズ (14)
シェフィールド今昔
酒井 寿紀
はじめに
この「ヨーロッパ今昔シリーズ」を始めたいきさつについては「パリ今昔」の「はじめに」をご覧下さい。
「現在」の写真はすべてGoogleの "Street View" によるものです。
「約100年前」の写真はすべて当時の写真集から取ったものです。
新旧対比表
No. | 約100年前(1900~1920年頃?) | 現在(2010~2020年頃) |
1 |
シェフィールド市庁舎 (Sheffield
Town Hall) |
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2 |
ファーゲイト通り (Fargate) |
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3 |
ピンストン通り (Pinstone
Street) |
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4 |
セント・メアリー教会 (St
Mary's Church) |
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5 |
ウィッカー通り (The
Wicker) |
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6 |
ノーフォーク通り
(Norfolk Street) |
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8 |
ハイ・ストリート (High
Street) |
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9 |
シェフィールド大学 (University
of Sheffield) |
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おわりに
これでおしまい
振り返ると、2020年10月の「パリ今昔」から、この「シェフィールド今昔」まで、1年半にわたって14編の「ヨーロッパ今昔シリーズ」を発行してきたことになる。何事にも飽きっぽい私としては、よく続いたものだと感心する。
14編中、第1編の「パリ今昔」から第10編の「マルセイユ今昔」までは、少なくとも一度は私自身が現地に行ったところだ。はじめはこのように実際に現地を見たところだけにするつもりだった。しかし、実際に行ったと言っても街の隅々まで自分の目で見たわけではないので、その他のところについては、古い写真集の写真とStreet Viewの写真を対比して並べただけである。
それなら行ったことがない街についも同様のことができるはずだと思うようになり、第11編「ベルリン今昔」以降の4編を追加することにした。実際に現地を見たわけではないので、臨場感のあるコメントを書き加えることはできなかったが、特に大きな問題はなかった。
この14編で、私の祖父が昔ヨーロッパで買い集めた写真集はほぼ扱い終わったので、この「ヨーロッパ今昔シリーズ」はこれで終わりにしたい。何せ古い写真がなければ何もできないからだ。
そこで、今まであまり触れなかった作成の舞台裏について若干補足しておきたい。
我が家にあった100年ほど前のヨーロッパの市街の写真をインターネットで公開するだけでも、興味がある人は見てくれるだろうと思っていた。しかし、その場所が現在どうなっているかを同時に見ることができれば、見たい人がさらに増えるだろうと思った。
一方、Googleは世界中の市街地の現在の姿をStreet Viewで無料で公開している。そこでこの二つを使って、同じ場所の古い写真と現在の写真を並べて見られるようにすれば面白いのではないかと考えた。
Street Viewの写真にはもちろん著作権があるが、非営利目的なら"Fair Use"として利用が認められることになっている。また、古い写真は出版後少なくとも90年以上経っているはずで、もともと出版者も出版年月も著作権もまったく記載がないので問題はない。
実際にやってみるといろいろ障害もあるだろう。しかし、やってみないことには、何が問題かも分からない。そこで、あまり深く考えずにとにかく始めてみることにした。そういうわけなので、初めはまったくの手さぐり状態だった。
作成に使った道具は?
まず初めに、今回の作業に使った道具について簡単に触れておく。
古い写真集の写真をパソコンに取り込んだのは、プリンタとスキャナが一体になったパソコン用の市販品だ。 画像はJPEGのファイルでパソコンに取り込み、その大きさなどをPhotshopで調整してウェブページに貼り付けた。
Street Viewの写真を取り込むのに使ったブラウザは"Google Chrome"である。このブラウザの印刷機能で、画像をPDFファイルで取り込み、それをPhotoshopでJPEGファイルに変換して加工した。私は当初、他のブラウザの印刷機能では、紙への印刷はできるがPDFへの変換はできないと思っていたが、現在はできるようになっているようだ。
要するに、パソコン用のごく一般的な市販品のハードとソフトを使っただけである。
うまく行かなかったのは?
Street Viewは原則として、屋根の上に特殊なカメラを積んだクルマで道路を走り回って写真を撮っているので、クルマが入れない公園や施設の中の写真はない。クルマが入れない場所では、頭上に特殊なカメラを付けた人間が歩き回って写真を撮ったものもあるが、そういう場所は限られている。また、通常のカメラで撮った写真を地図上の撮影地点に登録しておくこともできるが、これも場所が限定される。例えば、「パリ今昔」のNo. 18(リュクサンブール公園)、「ローマ今昔」のNo. 8(フォロ・ロマーノ)、等である。これらについては、昔の写真に近い場所で撮ったものを捜すのに苦労した。
昔は自由に写真を撮れた場所に現在は建物が建ってしまって、同じ角度の写真がないものもある。例えば、「ロンドン今昔」のNo. 3(ウェストミンスター寺院)等である。
建物の高層階、塔の上など、高いところから撮ったものも、同じ角度の写真はない。例えば、「パリ今昔」のNo. 14(バスティーユ広場)、No. 15(レピュブリック広場)、等である。これらについては、読者に我慢してもらう他ない。
このような問題点は、すべて作業をしてみて初めて分かったものである。
予想以上にうまく行ったのは?
Street Viewでは建物の中は見ることができないのが普通だが、建物の内部が見られるところもかなりあることが分かった。例えば、「ミラノ今昔」のNo. 2(ガッレリア)、「ナポリ今昔」のNo. 10(サン・カルロ劇場の内部)、「ヴェネツィア今昔」のNo. 3(サン・マルコ寺院[内部])、等である。今後はこういう建物の内部の写真がさらに増えるのかも知れない。
Street Viewの写真には、最近の写真が何枚か登録されていて、その撮影年月が分かるものもあった。これによって、最近改築された建物については、いつ頃改築されたかが分かるものもあった。
こういう情報が入手可能なことは、作業を進めていく途中で分かったので、もし最初から分かっていたら、より詳しい情報を提供できただろう。例えば2019年4月に火災を起こしたパリのノートルダム寺院(「パリ今昔」のNo.2、No. 3)では、「現在」の写真として修復工事中の写真を掲げたが、火災前の写真を加えることもできた。また後2~3年経てば、修復後の姿を示すこともできるようになると思われる。
(完) 2022年4月13日