ヨーロッパ今昔シリーズ (5)
ナポリ今昔
酒井 寿紀
はじめに
この「ヨーロッパ今昔シリーズ」を始めたいきさつについては「パリ今昔」の「はじめに」をご覧下さい。
「現在」の写真はすべてGoogleのStreet Viewによるものです。
「約100年前」の写真はすべて当時の写真集によるものです。発行元、発行者、写真撮影者等の記載は全くなく、不明です。
新旧対比表
No. | 約100年前(1900~1920年頃?) | 現在(2020年) |
1 |
ナポリ市街とヴェスヴィオ山
(Napoli
& Vesuvio) |
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2 |
卵城 (Castel
dell'Ovo) |
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3 |
グラドーニ・ディ・キアイア通り (Gradoni
di Chiaia) |
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4 |
パッロネット・ディ・サンタ・ルチア通り (Pallonetto
di Santa Lucia) |
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5 |
プレビシート広場 (Piazza
di Plebiscito) |
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6 |
王宮 (Palazzo
Reale) |
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7 |
ガッレリア・ウンベルト1世 (Galleria
Umberto I) |
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8 |
国立考古学博物館 (Museo
Archeologico Nazionale) |
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9 |
サン・カルロ劇場 (Teatro
di San Carlo) |
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10 |
サン・カルロ劇場の内部 (Interior
of Teatro di San Carlo) |
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11 |
マルティーリ広場 (Piazza
dei Martiri) |
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12 |
ダンテ広場 (Piazza
Dante) |
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13 |
ジョヴァンニ・ボヴィオ広場 (Piazza
Giovanni Bovio) |
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14 |
ムニチーピオ広場 (Piazza
del Municipio) |
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おわりに
最後はイタリア語版「Wikipedia」
この「ナポリ今昔」で一番苦労したのが、「100年前にジョヴァンニ・ボヴィオ広場(No. 13)にあった噴水は、今はどうなっているのか?」という点と、「現在この広場にある騎馬像は、前はどこにあったのか?」という点が容易に分からなかったことだ。
騎馬像は容易に動かせないので、最初は、古い写真の騎馬像(No. 14)は現在と同じ場所にあり、周りの建物が第2次大戦の爆撃で破壊され再建されたのかも知れないと思っていた。しかし、最近の写真に、騎馬像の隣に100年以上前からの建物が写っているので、その可能性はない。
いろいろ調べが、関連する記事が見つからなかった。最後に調べたのが、イタリア語版の「Wikipedia」だった。その、「ジョヴァンニ・ボヴィオ広場」と「ムニチーピオ広場」の項目から、本文に記したような顛末が判明した。イタリア語の説明文をコピー/ペーストでGoogleの翻訳ソフトに貼り付けると一瞬にして英語に翻訳してくれる。イタリア語は分からず、翻訳結果の英語も100点とは言い難いが、実用上は充分だ。こうして、世界中の100か国語以上の資料を、すべて手軽に英語で読めるようにしてしまったことは、Googleの大変な功績だと思う。
このようにして、ジョヴァンニ・ボヴィオ広場にあった噴水と、ムニチーピオ広場にあった騎馬像が入れ替えられたことが分かった。入れ替えたと言っても、ムニチーピオ広場は広く、前に騎馬像があった場所と現在噴水がある場所は異なるが。
両広場は600m程度離れているので、台座を含めると80トンと言われるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の騎馬像を移動することは大変な作業だったと思われる。それにも関わらず入れ替えた目的は何だったのだろうか?
私がナポリに行った2010年には、王宮周辺で地下鉄と道路の大工事をしていた。この大工事の一環だったのだろうか?
なお「ジョヴァンニ・ボヴィオ広場」は、No. 13に写っている證券取引所が建っていたため、最近まで「ボルサ広場(Piazza Borsa)」と呼ばれていた。"Borsa" はフランス語の証券取引所 "Bourse" をイタリア語化したものだろう。
もはや "Street (View)" ではない?
サン・カルロ劇場の外観の写真を見ようと、劇場周辺の道路の写真を捜していたら、劇場のど真ん中にも写真が登録されているというマークがついていた。「一体何の写真なのだろう?」と開いたところ、サン・カルロ劇場の内部の写真だった。幸い古い写真も手元にあったので、両者をNo. 10に並べておいた。
最近はNo. 7の「ガッレリア・ウンベルト1世」のように、他にも建物内部の写真が多数 "Street View" に登録されている。従って、遠からず "Street xxx" とは言い難くなる日が来るかも知れない。その時は何という名前にするのだろうか?
(完) 2021年4月2日