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ヨーロッパ今昔シリーズ (10)

マルセイユ今昔

酒井 寿紀

はじめに

この「ヨーロッパ今昔シリーズ」を始めたいきさつについては「パリ今昔」の「はじめに」をご覧下さい。

「現在」の写真はすべてGoogleの "Street View" によるものです。

「約100年前」の写真はすべて当時の写真集から取ったものです。

新旧対比表

No. 約100年前(1900~1920年頃?) 現在(2021年)
1

 ノートル・ダム・ドゥ・ラ・ギャルド大聖堂  (Notre-Dame de la Garde)
 丘の上に建つマルセイユのシンボル。1853年に着工したが、完成したのは1864年という。
 建物は昔と変わらないが、道路や駐車場が整備されている。

2

 ロンシャン宮  (Palais Longchamp)
 元はマルセイユへの給水施設だったという。
 1839年に着工したが、建設に30年要し、完成したのは1869年という。
 現在、左の建物は美術館、右の建物は博物館として使われている。

3

 凱旋門  (L'Arc de Triomphe)
 1784年から計画が進められたが、最終的に完成したのは1839年だという。
  エクサン・プロヴァンスに通じる
道の出入口にあるため、「エクスの門(Porte d'Aix)」とも呼ばれる。
  門の上部の立像は4体とも風化のため剥がれ落ちている。(逆の面の4体は残っている。)

4

 レピュブリク通り (Rue de la République)
 
中央の建物はほとんど変わってない。その右を奥(北)へ向かうのがレピュブリク通り。
 左手前が旧港。(No. 12参照)

 カステランヌ広場  (Place Castellane)
 中央の泉は1913年にカンティーニによって寄贈されたため、「カンティーニの泉」と呼ばれる。
 泉ができる前は、ここにはオベリスクが建っていたという。

 広場から奥(南)へ向かう道路は「プラド通り」。(No. 6参照)

6

 プラド通り (Avnue du Prado)
 カステランヌ広場(No. 5)から見たところ。中央の建物は昔のまま。
 その右を奥へ向かうのが「プラド通り」。    

7

 ブルス(証券取引所) (Bourse) 
 建設計画が決まったのは1834年だが、ナポレオン3世によって開所されたのは1860年という。
 当初は証券取引所として使われていたが、現在は商工会議所と博物館として使われている。     

8

 カヌビエール通り (La Canebière)
 この通りの右側で2階に円柱が並んでいる建物がブルス(No. 7)。
 通りの突き当たりは旧港。    

9

 ブルス広場 (Square de la Bourse)
 カヌビエール通り(No. 8)を挟んでブルス(No. 7)の反対側にある。
 この広場は「ブルス広場」と呼ばれ、古い写真のように泉や花壇が設けられていた。
 1970年のド・ゴールの死後「ド・ゴール将軍広場」となり、地下駐車場が建設された。

10

 サン・ヴァンサン・ドゥ・ポール教会 (Église Saint-Vincent-de-Paul)
 カヌビエール通り(No. 8)を旧港から東へ1kmほど行ったところにある。

11

 市庁舎 (Hôtel de ville)
 旧港の北側の岸壁に面して建っている。古い写真は桟橋の上から撮ったものだろう。
 着工したのが1653年、完成したのが1673年というので驚く。ルイ14世がまだ若かった頃だ。
 300年以上経った現在でもまだ現役である。     

12

 ベルジュ河岸 (Quai des Belges)
 東に入り江状に入り込んでいる旧港の最奥部の河岸。中央右寄りの大きな建物2棟はほとんど変わってない。
 その間を奥へ向かうのがレピュブリク通り。(No. 4参照)    

13

 サン・ジャン要塞 (Fort Saint-Jean)
 旧港(写真の右端)の入口の海峡の北側にある。
 1660年にルイ14世によって建てられ、その後、政治犯の牢獄などに使われてきた。
 主要な建物はほぼ100年前のまま。現在の写真の左端の黒い建物は最近増築された博物館。
  その後方に見えるのはマルセイユ大聖堂。


おわりに

「ヨーロッパ今昔シリーズ」を振り返って

2020年10月の「パリ今昔」から始めた本シリーズも、この「マルセイユ今昔」の発行で10編になった。これは、私の祖父が昔ヨーロッパで買い集めた写真集と、Googleの"Street View"で見ることができる同じ場所の写真を並べて見たら面白いのでないかと思って、1年近く前に始めたものである。

初めは、「同じ場所の写真が、はたしてあるだろうか?」と心配した。昔の写真を撮りなおすことは絶対にできないので、もっぱら"Street View"の写真を捜しまわることになる。すると、"Street View"専用のクルマから撮影したもののほかに、クルマが入れない公園の芝生、砂浜、桟橋、教会や劇場の中などで撮影したものもかなりあることが分かり、本シリーズでもだいぶ使わせてもらった。

しかし、昔の景色の中には建物の高層階から広場などを見下ろしたものもあり、"Street View"で同じ角度の写真を得ることはできなかった。そういう場合は、人の背の高さぐらいからの写真で代用することになる。そのため、角度は相当違うものになるが、広場のまわりの建物が同じか、変わってしまったかなどは充分に判別できることが分かった。

こうして、当初心配したほどの問題はなかった。教会の祭壇やオぺラ劇場の舞台、ショッピング・アーケード内の通路まで昔とほぼ同じ角度の写真が入手できたことは、望外の幸せだった。

このシリーズはここで一休み?

さて、このシリーズは今後どうしようか? 

このシリーズの対象は、昔の写真集が我が家にあって、かつ私が少なくとも1回は現地に行ったことがある都市に限定してきた。それはこれまでに発行した10編になる。そういう意味ではこのシリーズはこれで完結である。

しかし、「少なくとも1回は行ったことがある」と言っても、その街の隅から隅まで見たわけではない。いや、実際に見たのはその街のごくごく一部にしか過ぎないのが大半だ。そのため、「別に行ったことがなくても、こういう今昔シリーズは作れそうだ」ということが分かった。予備知識が全くないと写真の撮影場所を捜すのに時間はかかるだろうが、今までのものもインターネットの検索機能にお世話になってきたので、大差なさそうだ。

もし「行ったことはないが写真はある」都市にまで対象を広げると、ドイツのベルリンやエッセン、イギリスのマンチェスターやシェフィールドなども対象になる。そして、祖父のヨーロッパ行きはインド洋、スエズ運河経由の船旅だったので、コロンボ、カイロなどにも対象を広げられそうだ。

しかし、今回のシリーズはここで一段落とし、あとはまた別の機会にしたい。もし、まだ生きていれば・・・

 (完) 2021年7月4日


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