ヨーロッパ今昔シリーズ (6)
リヨン今昔
酒井 寿紀
はじめに
この「ヨーロッパ今昔シリーズ」を始めたいきさつについては「パリ今昔」の「はじめに」をご覧下さい。
「現在」の写真はすべてGoogleのStreet Viewによるものです。
「約100年前」の写真はすべて当時の写真集から取ったものです。
新旧対比表
No. | 約100年前(1900~1920年頃?) | 現在(2020年) |
1 |
フルヴィエールの丘の上から見たリヨン全景
(Lyon
from Fourvière) |
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2 |
ベルクール広場 (Place
Bellecour) |
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3 |
フルヴィエール大聖堂 (Basilique
de Fourvière) |
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4 |
ギヨティエール橋 (Pont
de la Guillotière) |
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5 |
商工会議所 (Palais
du Commerce) |
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6 |
レピュブリク広場 (Place
de la République) |
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7 |
テロ―広場 (Place
des Terreaux) |
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8 |
ジャコバン広場 (Place
des Jacobins) |
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9 |
リヨン・オペラ座 (Opéra
de Lyon) |
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10 |
ボナパルト橋 (Pont
Bonaparte) |
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おわりに
西から東へと発展した街
リヨンの街には南北に2本の川が流れている。東側の川は、スイスのレマン湖から流れ出て、リヨンの街を通って地中海にそそぐローヌ川である。西側の川は、北の方から流れて来て、リヨンの南でローヌ川に合流するソーヌ川だ。 このように、リヨンは二つの河川の合流地点にあるため、古くから河川を利用した物流の中心地として栄えててきた。現在リヨンは、パリ、マルセイユに次いでフランスの第3の都市である。
ローマ時代には既にここに前線基地が築かれていたという。当時はソーヌ川の西のフルヴィエールの丘が中心だったようだ。そのため、今でもこのソーヌ川の西は「古いリヨン(Vieux Lyon)」と呼ばれている。この丘の上には、19世紀にフルヴィエール大聖堂が建てられた。(No. 2、No. 3) 街のどこからでも見え、街の守護神として扱われている。
ソーヌ川の西には平地があまりないため、街はソーヌ川とローヌ川に挟まれた土地へと発展していった。両川はリヨンの南で合流するため、この地区はいわば島のような土地になっているので、「プレスキル(Presqu'île):ほとんど島」と呼ばれている。商工会議所(No. 5)、市庁舎、リヨン美術館(No. 7)、リヨン・オペラ座(No. 9)等、古い大きな建造物はほとんどこの地区にある。
第2次大戦後、このプレスキルでも土地が足りなくなり、リヨンはさらにローヌ川の東側へと発展していった。ここは、(No. 1)でも分かるように、第2次大戦前は大きな建物がほとんどなかったところだ。「パール-ディユ(Part-Dieu)地区」と呼ばれ、新興のビジネス地区になっている。
(No. 1)の「現在」の左の方に2棟の高層ビルが見える。右の方は、正式には「パール-ディユ塔(Tour Part-Dieu)」だが、円筒型で先がとがっているので「鉛筆(Le Crayon)」とも呼ばれる。1977年にできた42階建てのビルで、今では驚くような高さではないが、当時のリヨンの人は度肝を抜かれたのではないかと思う。現在は、ホテル、レストラン、オフィス等に使われている。
左の方の高層ビルは、2015年にできた「インシティ塔(Tour Incity)」で、現在リヨンで最も高い。
ガダニュ館
リヨンは操り人形で有名な街だという。「古いリヨン」に博物館があって展示してあるというので、行ってみようと思った。場所がよく分からないので、その付近まで行って、年配の女性にカタコトのフランス語で、「操り人形(Guignol)の博物館はどこですか?」聞いたが、知らないと言うので諦めた。
後で、長年リヨンで大学の先生をしている日本人の女性にその話をすると、「『ガダニュ館』と言えば分かったかもしれません」と言う。
後で調べると、ガダニュ館(Hôtel Gadagne)が人形の展示を始めたのは1950年だそうで、私が行った時はまだ40年余りしか経ってなかったのだ。私が聞いた女性の頭には「ガダニュ館」しかなく、「xx博物館」など聞いたこともなかったのかも知れない。もっとも、私のカタコトのフランス語が通じなかった恐れも多分にあるが。
その後パリのマレ地区(古い貴族の館が多数あるところ)等で似たような経験を何回もした。そして、「ガイドブックに書いてある『xx博物館』等の言葉が通用すると思うな。100年以上前から使われてきた『xxの館』等と言え」という教訓を身に着けることができた。
(完) 2021年4月21日