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(株)エム・システム技研 「エムエスツデー 」2015年7月号 掲載 PDFファイル (エム・システム技研のサイトへ)
ITの昨日、今日、明日
酒井ITビジネス研究所 代表 酒 井 寿 紀
電話回線への接続に一苦労
昔は、海外のホテルなどから日本に連絡を取るときは、高い料金を払って国際電話をかけるしかありませんでした。
しかし、1990年代に入ると、ノートパソコンを持ち歩いて、ホテルの部屋で電話回線につなげば、パソコン通信で連絡できるようになりました。デジタルデータをモデムを使って人間の音声に見せかけて電話回線に流すため、通信速度が遅く、また事前に通信相手と同じパソコン通信サービスに加入しておく必要がありました。しかし、従来に比べれば、世界中どこからでも格段に安い費用で連絡が取れるようになりました。
もっとも、ホテルによっては、パソコンのソフトでホテルの電話交換機を介して外線に接続することが簡単にできず、特殊な細工が必要なこともありました。また、歴史の古い高級ホテルで、電話機の接続がモジュラージャックでないところはお手上げでした(1)。
電話よりLANの設備
1990年代の後半になると、パソコン通信に代って、インターネットのメールが広く使われるようになりました。また、電話回線に代って、ブロードバンド回線やローカル・エリア・ネットワーク(LAN)が使われるようになり、通信速度がはるかに高速になりました。
軽井沢の小さいホテルを利用したとき、ホテルの部屋に電話がなく、その代りにLANの端子が用意されていて驚いたことがありました。「皆さん携帯電話を持っているので電話機はあまり要らないようです。しかし、中にはインターネットを使いたいという人もいるのでLANを用意しました」とそのホテルのオーナーは言っていました(1)。
3G/4G、Wi-Fiでインターネット接続
2007年にiPhone、2010年にiPadが登場して、モバイル通信の新時代が始まりました。もはや、重く、かさばるノートパソコンを持ち歩く必要はなくなりました。また、第3世代・第4世代の携帯電話回線(3G/4G)が使えるところなら、どこからでもインターネット接続ができるようになりました。真のモバイル時代の到来です。
スマートフォンやタブレットは3G/4Gのほか、無線LAN
(Wi-Fi)でもインターネット接続ができます。最近は、自宅や職場でWi-Fiの設備が用意されているところが多く、駅や空港、コンビニ、コーヒーショップなどで、公衆のWi-Fi網が使えるところが増えています。これらWi-Fiが使えるところでは、3G/4GよりWi-Fiを使った方が安く、高速の通信ができます。
小生は、スマートフォンでインターネットを使うのは、自宅、駅、ホテルなど、Wi-Fiが使えるところがほとんどなので、日常は3G/4Gでのデータ通信機能をオフにしています。こうすれば不要な広告の受信のために3G/4Gを使うこともなく、データ通信料がゼロの月もかなりあります。
もちろん小生も、旅行中などは3G/4Gでのデータ通信をオンにしています。また先日入院したときは、病院に患者用のWi-Fiの設備がなかったため、これをオンにしていました。暇つぶしに落語の動画などを見ていたため、データ量が8日間で400メガバイトを超えてしまいましたが、データ量が少ないときは従量制で、それが約9メガバイトを超えると5,000円台の定額料金になる契約をしていたので心配不要でした。
このように、平常はできるだけWi-Fiを使った方が、費用がかからず、高速通信ができるため、最近は世界中でWi-Fiを使えるホテルが増えています。小生は、ホテルを選ぶとき、部屋でWi-Fiが使えることを重要な条件にしています(2),(3),(4)。
Wi-Fiを使い易く!
このようにWi-Fiには利点が多いのですが、現在の公衆Wi-Fi網には問題点も多数あります。
まず第1に、有料のWi-Fi網や携帯電話事業者が提供する無料のWi-Fi網は、事業者ごとに使える公共施設や店舗が違い、近くにアクセスポイントがあっても、別の事業者のものは使えないことです。
電話回線のダイヤルアップ接続には、全世界のアクセスポイントが使えるiPassというローミング・サービスがありました。最近はそのWi-Fi版が始まっていますが、今後個人でも妥当な料金で世界中のアクセスポイントを使えるようになることが望まれます。最近、公衆Wi-Fiサービスの卸と小売りの分化が一部で始まっているのは、その萌芽と見ることもできます。
第2に、公共施設などで無料のWi-Fiを使うときに、メールアドレスなどの入力を要求するものが多いことです。これは外国人の旅行者に、日本で最も不便な点だと言われているようです。大半の旅行者はウェブを閲覧するだけなのに、どうしてこういう面倒な操作を要求するのか理解に苦しみます。一歩ホテルに入ればWi-Fiが認証などなしに自由に使えるところも多いのです。
Wi-Fiの危険性を強調する人もいます。しかし、買い物サイトや金融機関などは別途パスワード、暗号化などの対策をしています。鍵を増やせばより安全になることは確かですが、利便性との兼ね合いを無視してはなりません(5)。
3G/4Gか、Wi-Fiか?
インターネット接続に3G/4GでなくWi-Fiを使うことは、ユーザーだけでなく携帯電話の事業者にとっても大きなメリットがあります。3G/4G回線の混雑緩和のため、3G/4G回線の負荷を別の回線に移す(オフロードする)ことが大きな課題だからです。
こうして、ユーザーにとっても通信事業者にとってもメリットがあるため、今後は3G/4GとWi-Fiをどう使い分けるかが大きな課題になると思われます。
スマートフォンなどは、Wi-Fiが使えるところでは極力Wi-Fiを使い、3G/4GはもっぱらWi-Fiが使えないところで使われるようになると思います。3G/4Gの大きな市場はカーナビなど車載器のインターネット接続になるのではないでしょうか?
ただし、こういう使い分けが実現するためには、3G/4GとWi-Fiの間で相互に自動切り替えを行う垂直ハンドオーバーの技術の確立、公衆Wi-Fi網の改善など、まだ解決すべき問題が多いようです。
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