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(株)オーム社 技術総合誌「OHM 2013年12月号 掲載        PDFファイル

 

テレビは汎用ディスプレイに?

 

酒井 寿紀Sakai Toshinori) 酒井ITビジネス研究所

 

パナソニック vs. 放送事業者

20134月に、パナソニックが「スマートビエラ」という新型テレビを発売した。ところが、これが電波産業会の技術ルールに違反しているという理由で、民放各社からCMの放映を拒否された。

スマートビエラはインターネットも扱えるスマートテレビで、電源を入れるとテレビ画面のまわりにいくつかのウェブの画面が表示される。この初期画面が問題にされた(b)

電波産業会というのは、電機メーカー、放送事業者、通信事業者によって構成される業界団体で、この団体の「運用規定」が、テレビ受信機によるテレビ放送の扱い方を細かく規定している。

その1つが、テレビ受信機はテレビ局から放送される画面をそのまま全面に表示するのが基本で、視聴者の操作で機器の設定情報などが画面の一部に表示されるのは構わないが、電源投入時に自動的に他の情報が混在するのは好ましくないとしているのだ(a)

20139月に、パナソニックは来年以降発売する機種で仕様を見直すことを民放各社に伝え、拒否されていたCMが放映されることになったという(c)

テレビの放送事業者がテレビ受信機に注文をつけるのは、食材の供給者がその料理法や食べ方に注文をつけるようなものだ。著作権を侵害するような画面の改変がない限り、どういう表示方法をしても構わない気がする。現にパソコンでは、テレビ画面は全画面の一部に埋め込まれて表示される。

テレビ受信機がもっぱらテレビ放送の受信に使われていた時代には、こういう規定も通用したのかもしれない。しかし、インターネットの出現などでテレビ受信機の位置付けが大きく変わった現在、こういう規定は、はたして国際社会で受け入れられるのだろうか? まず、最近のテレビの使われ方を見てみよう。

 

最近のテレビの実態は?

元々テレビ受信機は、その名の通りもっぱらテレビ放送を見るために使われていた。だが、現在はどうだろうか?

ビデオレコーダーを接続して、レンタルビデオを見るのに使われている。また、ビデオカメラを接続して、自分で撮影したビデオを見ている。そして、ゲーム機を接続して、ゲームの映像の表示に使っている。

最近は、インターネットに接続して、YouTubeなど、インターネットで配信される動画を見ることができる。また、アクトビラやHuluで映画やテレビドラマを見ることもできる。

そして、写真をプリントせずにスマートフォンやタブレットに入れている人が多いが、これをテレビにつなげば大勢でいっしょに見るときに便利だ。

このようにテレビ受信機は、今やテレビ放送の視聴だけでなく多目的に使われるようになった。

テレビ放送の受信以外に使うときは、テレビに内蔵されているチューナーは使わない。テレビの受信時も、ケーブルテレビで見ている家庭では内蔵チューナーは要らない。米国などではケーブルテレビの利用者が多いので、テレビはチューナーを内蔵してないのが普通だ。多目的の汎用ディスプレイに、一部の人には不要なチューナーを標準で付けて販売をしているのが現在の日本のテレビの実態だ。

 

スマートテレビは要らない?

テレビでインターネットの動画などを見るには、テレビをインターネットに接続する必要がある。それには、セットトップボックスを使う方法、ゲーム機を使う方法、スマートテレビを使う方法などがあると昨年の本コラムに記した(1)。しかし、最近はタブレットやスマートフォン(以下、タブレットで代表させる)をHDMIインタフェースでテレビに接続すれば、タブレットと同じ画面をテレビで見ることができるので、余計なカネもかからず最も簡便だ。手元のタブレットを操作に使えば、タブレットで直接見るときと同じ操作でよく、テレビやゲーム機のリモコンより操作性もいい。

現在の難点は、タブレットとテレビを長いHDMIケーブルで接続しなければならないことだが、映像用の無線通信技術がいろいろ出現しているので、近い将来、どのタブレットとテレビも標準の無線インタフェースで接続できるようになるだろう。

そうなれば、タブレットを持っている人にはスマートテレビは不要になり、スマートテレビの需要は相当減るものと思われる。

 

明日のテレビは?

このようにして、インターネットで配信される映像をテレビで見るときは、タブレットなどが映像信号の中継用と共に、リモコン用としても主役になるのではないだろうか。ユーザーにとっては、テレビ放送とインターネットを1つの機器だけで扱う必要はなく、タブレットなども含めて、家庭内のすべての機器を効率よく使って、やりたいことができればいいからだ。

その場合、汎用ディスプレイの多数の入力の切り替えは、現在のテレビと同様にリモコンで切り替えるのが最も単純で分かりやすい。そして、インターネットや各種アプリケーションの操作は、タブレットなどで行うのが最も実際的だと思う。

今後のテレビがそうなれば、今回のパナソニックと放送事業者の対立のような問題はもはや起きなくなる。

 

(1) 「テレビ画面の争奪戦」, OHM, 20126月号, オーム社  (http://www.toskyworld.com/archive/2012/ar1206ohm.htm)

 

[関連記事]

(a) 「放送番組及びコンテンツ一意性の確保に関するガイドライン、2007年8月28日、地上放送事業者連絡会、BS放送事業者連絡会

(b) 「パナの新型テレビCM拒否 技術ルール違反と民放」、2013/07/06、47NEWS(共同通信) (http://www.47news.jp/CN/201307/CN2013070601001715.html)

(c) 「パナソニック、スマートTVの仕様見直し 民放の反発受け」、2013/9/12、日本経済新聞 (http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD120TR_S3A910C1TJ1000/)

 


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