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(株)オーム社 技術総合誌「OHM」 2012年1月号 掲載 PDFファイル
スマートフォンもホーム・ネットワークの一員に!
酒井 寿紀(Sakai
Toshinori) 酒井ITビジネス研究所
スマートフォンはパソコンとの併用が必要?
スマートフォンがあれば、パソコンがなくても、ウェブの閲覧やメールの送受信ができる。では、スマートフォンは、パソコンの助けを借りなくても十分に使いこなせるのだろうか?
スマートフォンは画面が小さく、キーボードがない。そのため、住所録や電話帳、スケジュール表などのデータを大量に入力するときはパソコンを使いたくなる。
そして、スマートフォンは常時持ち歩くため、パソコンより故障や紛失のおそれが大きく、また、タッチスクリーンのため、操作ミスの可能性も高い。そのため、パソコンなどでのデータのバックアップが不可欠だ。
また、スマートフォンで問題が起きたときはウェブのフォーラムなどの情報を調べる必要があり、複雑な技術情報を読むにはパソコンが欲しい。
そして、文書を作成したり、画像を編集したりするのにはパソコンが必要で、パソコンで作成した文書や画像はパソコンのディスクに保管してある。最近は電子書籍や音楽ファイルもパソコンに保管しておくようになった。こうしてパソコンに保管されているファイルの一部をスマートフォンにコピーして、外出先で自分で視聴したり、他人に見せたりしている。
このようにスマートフォンは、単独でも使えないことはないが、十分に使いこなすにはパソコンとの併用が必要である(a)。
現在の接続方法は?
では、スマートフォンとパソコンを連携させ、ファイルを交換するには、どういう方法があるのだろうか? サムスンのAndroidのスマートフォンについて見てみよう。
1つは、USBケーブルでスマートフォンをパソコンに接続する方法で、スマートフォンのユーザーメモリをパソコンの外部メモリとして扱うことができる。しかし、これにはケーブルの接続作業が必要で面倒だ。
この他に、サムスンのスマートフォンには、同一無線LANルーターに接続されたパソコンとの間でファイルを交換する機能がある。スマートフォンの「Kies
air」というソフトを使うと、パソコンのブラウザでスマートフォンのファイルを扱うことができる。
問題は、USB接続、「Kies
air」とも、パソコン側からスマートフォンのファイルを見たり、操作したりすることはできるが、その逆はできないことだ。1つの装置から他の装置のファイルを見るのは比較的安全だが、他の装置のファイルを変更したり削除したりするのは危険を伴う。したがって、装置間でファイルをやり取りするときは、受信側から送信側にファイルを取りに行く方が安全である。
もう1つの問題は、両者ともファイルのアクセス権限を管理してないことだ。ファイルシェアをするときは、それを使う人ごとに権限に差を設け、またシェアするファイルごとに、閲覧のみ許可、書き換えも許可、などの設定ができるのが普通だ。
前記のUSB接続や「Kies
air」では、スマートフォンをパソコンに接続するとパソコン側で何でもできてしまうので、操作ミスやパソコンの誤動作に対してはなはだ無防備である。
望まれるSMBでの接続
本誌2010年12月号の本コラムに、WindowsやMac
OSのパソコンの間ではSMB
(Server Message Block)というファイルシェアが広く使われていると記した(1)。このSMBでは、接続されている各パソコンが対等で、前記のアクセス権限がきちんと管理され、ファイルを提供する側が他の装置からの閲覧を禁じたり、書き換えを禁じたりすることができる。
現在、このSMBを正式にサポートしているスマートフォンはないようだが、SMBをサポートするサードパーティーのソフトは多数出回っている。このことから、スマートフォンについてもSMBによるファイルシェアに対するニーズが大きいことが分かる。
ここで問題なのは、SMBをサポートするためには、Androidなどのスマートフォン用OSのベースになっているLinuxの「root」という管理者用の機能を使う必要があり、それがOSの提供元から正式には提供されてないことだ。そのためSMBのサードパーティーのソフトは、保証されていない機能を使うことになり、信頼性上の問題を招き、また、将来も使えるという保証がない。
ファイルシェアの機能はOSの基本的な機能なので、OSの提供元がきちんと正式にサポートするべきだ。
2010年までスマートフォンの最大のメーカーだったノキアは、マイクロソフトのスマートフォン用のOSであるWindows
Phoneを採用し、Android陣営やアップルのiPhoneに対抗しようとしている。このWindows
Phoneにとっては、先行している他社のOSとの差別化が大きい課題だが、パソコン用のWindowsとの親和性が最も差別化しやすい点で、かつユーザーのニーズも高いと思われる。
従って、Windows
Phoneも現在はSMBを正式にはサポートしていないようだが、マイクロソフトはこれを正式にサポートする可能性がありそうだ。そうなれば、Android陣営やiPhoneも対抗上SMBを正式にサポートするようになるのではなかろうか?
(1)
「ホーム・ネットワークはどうなる?」,
OHM, 2010年12月号,
オーム社
(http://www.toskyworld.com/archive/2010/ar1012ohm.htm)
(http://toskysitreview.blogspot.jp/2011/10/galaxy7.html)
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