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(株)エム・システム技研 「MS TODAY 」2011年7月号 掲載 PDFファイル (エム・システム技研のサイトへ)
(文中のカットはエム・システム技研提供)
海外よもやま話
第6回 インターネットで友達作り
酒井ITビジネス研究所 代表 酒 井 寿 紀
友達作りの道具の変遷
インターネットにはいろいろな使い道があります。その中に、新しい友達や仲間を作ることがあります。
1990年代には、自分のウェブサイトを開設して、文章や写真、絵などを掲載するのがその一つの方法でした。これを多くの人に見てもらうには「ウェブ・ディレクトリ」に登録する必要がありました。小生は、1997年に水彩画の日本語と英語のサイトを開設して、「ヤフー!
ディレクトリ」に登録しました。そして多くの人から感想などをもらいました。
2000年代に入ると、こういうウェブ・ディレクトリは下火になり、目的とするウェブページを探すにはもっぱら検索エンジンを使うようになりました。
そして、2000年代の半ば以降、新しい友達や仲間作りの道具として「ソーシャル・ネットワーク」と言われるものが盛んになりました。全世界で使われている「フェイスブック」や「マイスペース」、日本の「ミクシィ」などです。これらのサイトに趣味や嗜好を登録しておくと友達を作ることができます。日々の行動記録や感想など、何でも発信することもできます。また、別途ウェブサイトを運営していれば、その紹介もできます。小生は2年前に米国のマイスペースとフェイスブックに加入してみました。
こういうものを使って経験したことを、小生の限られた体験の中から何件かご紹介しましょう。
アメリカの女性と知り合いに
海外の人からもらうメールには、“Honoured
sir”で始まる格調の高いものから、気軽に“Hi!”と呼びかけてくるものまでいろいろありした。知らない人にいきなり“Hi!”と呼びかけらると、日本人としてはいささか違和感を覚えましたが、彼/彼女たちの間ではこれはごく普通なのでしょう。
突然とんでもないことを聞いてくる人もいました。あるとき「Saka…というサインがある絵を持っているのだが、日本の画家だと思う。あなたの名前もSakaが付くので、Sakaが付く画家を知りませんか?」と聞いてきた人がいました。「坂本繁二郎という画家はいますよ」と教えてあげましたがどうなったでしょうか。
このように、アメリカ人は気軽に何でも話しかけてくるようです。それに比べると、日本人はシャイなのか、ほとんど何の反応もありませんでした。もっとも、インターネットがきっかけで結婚した人を何人か知っていますので、これは一般的とは言えないのかもしれません。最近のインターネットのフォーラムでは「ネット言葉」の会話が飛び交っています。彼らには、小生のように伝統的な日本語しか使わない人には声をかけづらいのかもしれません。
小生のウェブサイトを見てメールをくれた人の中に、アメリカの女性で、息子さんが自分でインターネット関係の仕事をしているという、かなり年配の人がいました。自分でもウェブサイトを持っていて自作の絵や詩を掲載しているという、教養の高い人でした。ただ、インターネットの技術的なことはまったく分からないので、息子さんに手伝ってもらっているとのことでした。
1999年から2000年に年号が変わるとき、コンピュータのプログラムが誤動作して世の中が大混乱するのではないかと、世界中で大問題になりました。いわゆる「2000年問題」です。この女性は、1999年の10月頃から、自分は水や食料のほか、発電機まで用意したので、あなたもちゃんと対策しなさいと何回も言ってきました。息子さんや知り合いの警察官に言われたというので、アメリカにはこういう人がかなりいたのだと思います。さすがは、自分の生命・財産は自分で守ろうとする国だと感心しました。
海外の人と直接連絡を取り合うと、こういう一般には報道されない海外の状況も分かります。
自国語で世界に発信
2年前に加入した英語版のフェイスブックには、小生のような非英語圏のユーザーも多数います。驚いたことに、その中には、自己紹介は英語で書いているのですが、その他の情報には平気で自国語を使っている人がいるのです。
ある時、ブラジル人から小生には読めないメールをもらったので、「これ、ポルトガル語? ポルトガル語はまったく分かりません」と連絡したら、「ごめんなさい」と英語で返事が来ました。その人の話では、読めないときはグーグルの翻訳サービスで訳すのだそうです。こうして、お互いに自国語を使って連絡し合うのがごく普通に行われているようです。小生のフェイスブックでの友達の中には、トルコ語、タイ語、セルビア語などを写真や絵の表題や友達同士の連絡に使っている人がいます。
自国の人とも外国人とも連絡を取りたい人には、英語版と自国語版の両方を使うより、英語版の中で必要に応じて自国語を使う方が便利なのだと思います。こういう点でも日本人の国際化は遅れているのかもしれません。
仕事に活用
ソーシャル・ネットワークのようなサイトに参加するときは、従来仮名を使うのが一般的でしたが、フェイスブックでは原則として実名を使い、居住地や出身校、勤務先なども公表することになっています。つまり、ネット上だけの仮想的な人格というものは存在せず、実世界の人間がネット上で連絡し合っているのです。そのため、従来のこの種のサイトとはかなり違う世界が展開されています。
もちろん、フェイスブックにも自分の水着姿の写真をベタベタ貼り付けて楽しんでいるような若い女性もいます。しかし、小生が入っている絵のグループのメンバーには、趣味で絵を描く人のほかにプロの画家がたくさんいて、フェイスブックを、自分の絵の展示、個展や絵画教室の案内、自分のウェブサイトの紹介などに使っています。こういうグループなので画商や画廊の経営者も加入していて、自分の商売の拡大に利用しています。
フェイスブックは、従来のこの種のサイトのようにネットのマニアの若者が占領しているわけではありません。いろいろな仕事をしている人たちが、自分の仕事をPRしたり、他の人の助けを借りたりするための道具として使っているのです。ユーザーの年齢層も20代から80歳に近い人まで幅広く分布しています。
フェイスブックのユーザーは全世界で5億人を超えたそうです。個人で仕事をしている画家、作家、研究者などにとって、こういうソーシャル・ネットワークは今後強力な武器になるのではないでしょうか?
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