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(株)オーム社 技術総合誌「OHM」 2010年12月号 掲載 PDFファイル
ホーム・ネットワークはどうなる?
酒井 寿紀 (Sakai Toshinori) 酒井ITビジネス研究所
Windows同士だと
パソコンが何台もある家庭が増えている。家族がそれぞれ自分のパソコンを持っている家庭もあるし、1人でデスクトップ型とノート型のパソコンを使い、旅行先へはノート・パソコンを携える人もいる。また、新機種を買ったが、旧機種も予備機として使い続けているケースもある。
これら複数のパソコンを有線のLANや無線LANでルーターに接続してインターネット接続を共有している家庭が多い。そして、Windowsのパソコン同士なら、ファイルを共有して他のパソコンのファイルを自由に使うことができる。また、プリンタを共有して、他のパソコンのプリンタを使うこともできる。
他の人に見られたくないファイルは共有しないように設定することもでき、また、見られてもいいが書き換えられたくないファイルは、読み出しのみ許可する設定もできる。
この機能を利用すれば、パソコンに格納されている文書、写真、音楽、送受信メールなどのファイルを、適宜他のパソコンのディスクにもコピーし、つねにバックアップを取っておくことができる。家庭でも非常に大事な文書や写真がパソコンのディスク内にしかないことが増えたが、こうしておけば、パソコンが壊れたり、パソコンを廃棄したりしたときもデータが失われることはない。
また、他のパソコン内のデータを利用して作業したいことも多い。
Windowsのパソコンがネットワークで接続されていれば、こういうことがケーブルのつなぎ換えなどしなくてもできる。これは最近のWindowsに標準機能として用意されている、SMB
(Server Message Block)というファイルやプリンタをシェアする機能によるものである。
他のパソコンとの間では
では、Windows以外のOSを使ったパソコンとの間ではどうだろうか? UNIX系のOSにはSambaという無料のソフトがあり、SMBの機能を使うことができる。Sambaはオーストラリア人によって開発されたソフトで、SMBの3文字を含んだ覚えやすい名前ということでこの名前が付けられたのだそうだ。
そして、アップルのパソコン用OSはMac
OS X (テン;ローマ数字の10)からUNIXベースになり、2002年8月にリリースされたMac
OS X 10.2からSMB機能が標準で使えるようになった。従来のアップルのOSではアップル同士でのファイル・シェアしかできず、Windowsとファイルをシェアするにはサード・パーティーのソフトを使うしかなかった。しかし、パソコンの世界ではWindowsが事実上の標準なので、アップルでもSMBが標準機能になった。その結果、サード・パーティーのソフトは不要になった。
こうしてパソコンの世界では、UNIX系のものも含め、ネットワークでファイルのシェアができるようになっている。
他の機器との間では
近年、無線LANでルーターに接続され、インターネット接続を共用する機器が増えている。スマートフォン、据置き型や携帯型のゲーム機などだ。これらの機器はパソコンとインターネット接続の共用はできるが、標準機能ではパソコンとの間やこれらの機器同士でのファイル・シェアはできない。
しかし、これらの機器についてもファイルやプリンタの共用のニーズは大きい。スマートフォンが壊れたり、スマートフォンを紛失したりしたときのために、住所録や予定表、メールの送受信記録などの大事なファイルはバックアップを取っておきたい。また、これらの機器で撮影した写真をパソコンのプリンタで印刷したいことも多い。
そのため、これらの機器で使われているBlackberry
OS、Symbian
OS、アップルのiOS、グーグルのAndroidなどのOSについても、SMB機能を使えるようにするサード・パーティーのソフトが多数出回っている。一部のスマートフォンやゲーム機のXboxに使われるマイクロソフトのWindows
Mobileについては、正式には公開されていないがSMBの機能が組み込まれていて、うまく設定すれば使うことができるという情報もウェブ上に流れている。
今後はどうなる?
今後、携帯電話回線と無線LANが両方使えるデュアル・フォン、電子書籍用端末、テレビなど、無線LANでネットワークに接続される機器はますます増える。そして、これらの機器の高度化とともに、それが扱う情報の重要さもパソコンと変わらなくなる。そこで、これらの機器についてもSMB機能に対する要求が強まるだろう。
そのため、これらの機器でもSMBが正規にサポートされるようになると思われる。サード・パーティーによるサポートでは設定上のトラブルが多く、また、信頼性にも問題があるからだ。今後は、スマートフォンなどにとってもホーム・ネットワークとの接続性のよさが重要なセールス・ポイントになるだろう。
ここで1つの問題は、現在SMBの仕様がマイクロソフトの知的財産権であることだ。そのため、現在は他社も無料で自由に使えるが、この状態が今後も続くという保証はない。また、将来他社に都合が悪いように変更されないという保証もない。したがって、このような仕様は標準規格として制定されることが必要である。
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