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(株)オーム社 技術総合誌「OHM 2009年11月号 掲載        PDFファイル

 

 

Facebookに加入して

 

酒井 寿紀Sakai Toshinori) 酒井ITビジネス研究所

 

全世界で3億人が使用!

ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)と呼ばれるウェブサイトがある。MySpaceFacebookなどで、自分の顔写真や趣味を登録しておいて、お互いに合意すれば「友達」になる。広い意味でのお見合いサイトのようなものだ。友達間で個人的に連絡し合ってもいいし、全部または一部の友達に情報を発信してもいい。

小生は、3年前に、当時最も利用者が多かったMySpaceに加入してみた。現在は日本でもサービスを実施しているが、当時はなかったので米国のMySpaceに入会した。小生は趣味で水彩画を描いているので、絵のグループに入って友達を捜したが、自分の水着姿の写真をベタベタ貼り付けているようなギャルが多いので驚いた。ごく一部を覗いただけだが、どうも我々には縁遠い世界のような気がした。

ところがその後、Facebookが急速にメンバーを増やし、最近月間利用者数がMySpaceを追い越したという。この9月には全世界でのメンバーが3億人を超えたそうだ。このSNSはどうなのだろうかと8月に入会し、やはり絵の関係のグループに入会してみた。Facebookの会員はMySpaceとは違い、友達以外に個人情報を公開していない人が多いので、最初は顔写真だけを頼りに適当に友達関係を申し込んだところ、8割以上の人と友達になれた。その後は、好みが合いそうな絵を描く人の友達の中から新しい友達を増やしていった。そのうち、向こうから友達関係を申し込んでくる人も現れ、この1か月で40人あまりの友達ができた。

まだFacebookのごく一部を覗いただけだが、MySpaceとは違う世界がそこに展開されていることが分かった。ご参考までに、その一端をご紹介しよう。これがFacebookの全体像ではないとしても、その一部の現実の姿だ。

 

どんな人が何に使っている?

まず、利用者に年配者がかなり多いのに驚いた。生年を公開してない人も多く、特に女性はほとんど公開してないが、30代から60代程度までかなり平均して分布している。中には80歳前後の人も何人かいる。彼らは単にウェブを閲覧するだけでなく、Facebookで自分が描いた絵を展示したり、商売に活用したりしようとしているのだから、日本のウェブ利用者の年齢分布とはかなり違うようだ。

そして、プロの画家の利用者が多い。小生がたまたま入会したグループの特長なのかもしれないが、約半分はプロの絵描きだ。美術展の受賞者クラスから絵画教室の先生、個展を開いて何枚か売れれば喜んでいるような人までさまざまだが、絵で何がしかの収入を得ようとしている人が多い。彼らは自作の絵の展示、自分のウェブサイトへの誘導、展覧会の案内、最近の活動状況の報告などにFacebookを使っている。また、画家同士で、「あなたの絵の雲の描き方が気に入ったので、今度自分も試してみたい」というような意見を交わしていて、お互いに刺激を受けあっているようだ。

こうしてプロ、アマの絵描きが集まっているグループには画商や画廊の経営者も注目しているようで、小生のところにも3人の画商から友達関係の申し込みがあった。

小生が加入したのは米国のFacebookだが、その利用者は、小生同様必ずしも米国人ではない。40人あまりの友達の中には、ブラジル人、トルコ人、セルビア人、南アフリカ人などもいる。米国のFacebookなので、自己紹介などは普通英語で書くのだが、これらの人の中には絵の題などに平気で自国語を使っている人もいる。ブラジル人が突然知らない言語でメールをよこしたのには驚いた。「ヘルプ・ミー! これポルトガル語? ポルトガル語はまったく分かりません」と連絡したら、「ごめんなさい」と英語のメールが来た。彼はGoogleの翻訳機能を使って外国人とお互いに自国語でメールをやりとりしているようだ。外国人とのこういう交流の仕方がすでに一部では現実になっていることが分かった。

Googleの機械翻訳のレベルを確かめるため、試しにセルビア語の絵の題を英語に訳し、セルビア人に確かめたところ、ちゃんと訳せていた。ただし翻訳のレベルはまだかなり低く、複雑な文章のまともな訳はとても期待できない。辞書を引く手間が減るので、多少分かる外国語の解読の補助として役立つ程度だ。

まだ女性の友達は1/4程度だが、全体では女性の比率がもっと高く、半数に近いのではないかと思われる。小生が加入しているグループの管理者も女性だ。

 

仕事の仕方が変わる!?

オバマ大統領の当選にはFacebookが大きく貢献したと言われる(a)。また、イランの大統領選挙や、中国の新疆ウイグル自治区の騒乱の際、政府は反政府運動を封じるためにFacebookを一時使えなくした(b),(c)。これらの事例は、FacebookのようなSNSが政治活動上重要な役割を担うようになったことを示している。

しかし、前記の体験から、こういう国家レベルの話とは別に、SNSが個人の仕事の仕方についても、着実に影響を及ぼしつつあることが分かった。Facebookは写真や映像を大量に掲載できるので、特に画家には便利なのだろうが、画家に限らず、音楽家、科学者、料理研究家なども仕事にSNSを活用するようになっているのではないだろうか?

 

[関連記事]

(a)  "Barack Obama and the Facebook Election", Nov. 19, 2008, U.S. News & World Report

         (http://www.usnews.com/opinion/articles/2008/11/19/barack-obama-and-the-facebook-election)

(b)  "Report: Iran blocks Facebook ahead of presidential election", May 23, 2009, CNN

         (http://edition.cnn.com/2009/WORLD/meast/05/23/iran.elections.facebook/)

(c)  "China protests exiled Uyghur leader's visit to Japan", July 28 2009, International Business Times

         (http://www.ibtimes.com/china-protests-exiled-uyghur-leaders-visit-japan-301546)

   


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