●ウェブ版の利点

多くの新聞がウェブでも読めるようになった．そのため，紙媒体の新聞の購読者が減りつつある．数年前に，一人暮らしの人の7割が紙媒体の新聞を購読してないという調査結果があった．最近はもっと多いのだろう．今後紙媒体の新聞はどうなっていくのだろうか？　

まず，ウェブ版の利点を見てみよう．

(1)　速い！：紙媒体の新聞は朝夕2回しか発行されないが，ウェブ版は常時更新される．例えば，夜，当日の株価を知りたいと思っても，夕刊には昼頃の株価までしか載ってない．また，朝，前日のニューヨーク市場の状況を知りたくても，朝刊では最終状況がわからず，その日の売買の参考にできない．インターネットで世界中の株価の状況がリアルタイムにわかるようになったので，新聞の株価情報は古くてどうしようもない．

(2)　安い！：海外には有料のウェブ新聞もあるが，ほとんどが無料だ．タダほど安いものはない．民放のテレビ放送同様，広告収入で運営している．

(3)　関連記事が読める！:ウェブ新聞には記事のあとに，その件に関連する記事のリストがついているものが多い．これを利用してその件の過去の経緯や関連するできごとを知ることができる．また，過去の記事からキーワードで目的の記事を検索できるものも多い．

(4)　切抜きに便利！：取っておきたい記事は，パソコンに格納しておけばいつでも利用できる．はさみも切り抜き用のファイルも要らない．また，原稿などでそれを引用するときは，コピー・アンド・ペーストの機能を使えば再入力の手間がかからない．

(5)　環境にやさしい！：紙を使わないので，木を伐採する必要がない．製紙工場も印刷工場も印刷物の配送も不要だ．したがって，省エネ，省資源で，ゴミも出さない．

このようにウェブ版にはメリットが多い．

　

●ウェブ版で困ることは？

逆に，ウェブ版で困ることはないだろうか？

ウェブ版には天気予報がないものがある．しかし，天気予報は他のポータルサイトで最新の情報をいつでも調べることができるので，何もウェブ新聞に頼ることはない．

また，ウェブ版はラジオやテレビの番組を掲載してない．しかし，これも他のポータルサイトで見ることができる．1週間先まで掲載され，個々の番組の詳細もわかる．

そのほか，紙の新聞の生活情報，新聞小説，マンガ，囲碁，将棋などは，ウェブ版には掲載されてないものも多い．しかし，紙の新聞がこれらを掲載しているのは，読者が欲する情報を，ニュースから趣味・娯楽に至るまで，いっさいがっさい新聞に盛り込もうとしてきたからだ．ウェブ版の閲覧者は他のサイトも自由に見られるので，これらのすべてをウェブ版に期待する人はいないだろう．

紙の新聞の最後の読者は，どうしても新聞小説や4コママンガを読まなければ気が済まない人になるのかもしれない．

（酒井ITビジネス研究所）