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(株)オーム社新電気」2007年4月号 掲載        PDFファイル

最新 家電事情

 

固定電話がなくなる?

酒井 寿紀

 

固定電話と携帯電話が統合

NTTの固定電話の加入者数は,1997年をピークにして減り続けているという.一人暮らしの独身者などには,固定電話を持たない人が増えているようだ.ほとんどいない家に電話を引くより,そのカネを携帯電話に使った方が賢明だという判断だろう.

しかし,家でかけるなら固定電話の方が料金が安い.そのため,外出先では携帯電話を使い,家では安い固定電話を使いたい.これが一つの電話機で兼用できればなおいい.

こういう,デュアル・モードの電話機が現れた.企業用だが,NTTドコモが2004年に売り出した「パッセージ・デュプレ」がそのはしりである.今後,家庭用のものも現れる見込みだ.イギリスなどでもこういうサービスが始まっている.

このデュアル・モードの電話機は,一般に無線LANで固定電話回線に接続され,携帯電話でも固定電話でも同じ番号が使える.そして,屋外で携帯電話をかけながら家の中に入れば,自動的に固定電話に切り替り,また,固定電話で話しながら家の外に出れば,自動的に携帯電話に切り替る.これは「ハンドオーバー」とか「ハンドオフ」と呼ばれている.

このように固定電話と携帯電話が統合したものは,「FMC (Fixed Mobile Convergence)」と呼ばれる.これが普及すれば,固定電話回線がなくなるわけではないが,家庭の固定電話機や電話番号はなくなっていく.その代わりに,各人は,一生使える電話番号の「ワン・ナンバー」を持ち,一つの電話機「ワン・フォン」で,携帯回線や固定回線を意識せずに,シームレスに使えるようになる.

 

その影響は?

家庭の固定電話がなくなると,例えばどのような影響があるだろうか?

現在,役所に届け出をしたり,銀行の口座を開設したりするときは,必ず「自宅の電話番号」を書かされる.自宅の電話番号はホームレスでないことの証明として使われている.携帯電話の番号ではこういう目的は果たせない.

固定電話に電話して相手が出れば,相手は自宅にいることがわかる.そこで,セールスマンは株やマンションを売り込もうとする.しかし,携帯電話の場合は,相手が会社で会議中のこともあれば,クルマの運転中のこともある.したがって,今までのような電話セールスは困難になるだろう.

自宅の固定電話に電話すれば,例えば入浴中などで本人が出られなくても,家族がいれば誰かが電話に出る.しかし,携帯電話の場合は,本人の代わりに出ることは少ないだろう.緊急の場合これでは困る.また,家族の誰にでもいいから連絡を取りたい場合もあるだろう.逆に,本 人以外とは接触したくない人もいるだろう.そのため,例えば,緊急性を選択する機能,代理受信の機能,代理受信拒否の指定など,いろいろな機能が要求される.特許を取るなら今のうちだ.

(酒井ITビジネス研究所)

 


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