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オーム社 「新電気」2006年8月号 掲載 PDFファイル
最新 家電事情
その上,電話もかけられます!
酒井 寿紀
●携帯電話が「万能携帯端末」に
携帯電話の機能がどんどん増えている.
カメラは300万画素を超え,オートフォーカス,手ぶれ補正までついたものが現れた.短時間の動画記録もできる.その高機能化はとどまるところを知らない.
この4月からテレビのワンセグ放送が見られるようになった.電車の中でケータイ・メールに熱中している人たちが近々いっせいにテレビを見るようになるかも知れない.そして,携帯音楽プレーヤー内臓のものも現れつつある.KDDIはソニーと提携して,ソニー・エリクソン製の「ウォークマン」ブランドの製品を発売予定だ.日本のボーダフォンを買収したソフトバンクは,アップルと提携してiPod内臓の携帯電話を検討中という.
JR東日本のSuicaやコンビニのam/pmなどで使えるEdyというプリペイドカードを内蔵したものも現れた.これらはソニーのFeliCaというICタグを内蔵している.また,NTTドコモは三井住友カードと提携して,FeliCaを使ったクレジットカードを提供している.
ほとんどの携帯電話は時計を内蔵している.基地局からの信号で時刻を自動的に補正するものもあり,普通の腕時計より正確だ.
電卓を内蔵しているものも多い.キーの配列が普通の電卓と上下逆なのが難点だが,簡単な計算には十分使える.
PDA (Personal Digital Assist)の機能であるカレンダー,スケジュール管理,メモ帳などの機能が付いたものも多い.近年PDAの売れ行きが芳しくない理由の一つは携帯電話のこういう機能が普及したためだろう.親指での入力が難点だが,こういう機能を頻繁に使う人のためにパソコンなどと同じQwertyキーボード付きのものある.ウィルコムのPHSで使えるシャープ製のW-ZERO3,NTTドコモが販売しているモトローラ製のM1000などだ.これらはいわば携帯電話とPDAの中間的製品である.
今や,携帯電話というより「万能携帯端末」だ.電話は数多い機能の中の一つに過ぎない.携帯電話のセールスマンは,これらの機能を延々と説明した後,最後に言うかも知れない.「その上,電話もかけられます!」
●日本の現状の問題は?
携帯電話の万能携帯端末化にはもちろんいい面も多い.しかし,日本の現状には問題もある.日本では携帯電話を一般に電話会社が販売している.そのため,今後ますます高度化する電話以外のユーザー・ニーズに的確に応えられるかが疑問だ.そして,日本の電話会社は携帯電話端末の価格を安く設定し,そのかわり通信料を高くして採算を取っている.そのため,携帯電話の単純な機能しか使わない人も,複雑な携帯電話端末の開発費や製造コストを通信料として負担させられている.こういう受益者負担に反するいびつな価格政策は早晩行き詰まるのではなかろうか.
(酒井ITビジネス研究所)
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