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オーム社 「新電気」2006年4月号 掲載 PDFファイル
最新 情報家電事情 第3回
「タイムシフト視聴」のすすめ
酒井 寿紀
●「リアルタイム視聴」から「タイムシフト視聴」へ
従来,テレビを見るにはその時放送されているものを見るしかなかった.つまり「リアルタイム視聴」である.しかし,ビデオ・テープ・レコーダー(VTR)が出現して,これが変わった.テレビの放映時間に見られないときは,録画しておいて後で見るようになった.視聴時間を自分の都合に合わせてずらすわけで,「タイムシフト視聴」である.
VTRはその名の通り記録媒体にテープを使うので,いっぺんに多数の番組を録画することはできない.そして,録画された番組の中から見たいものを捜すのが面倒だ.しかし,これらの問題はHDD*)レコーダーの出現で解決した.現在日本でDVD**)レコーダーとして販売されているものは,DVDにもHDDにも録画できるものが多いが,テレビの視聴方法に大きなインパクトを与えたのはHDDに録画する機能である.この機能を使って,例えば,週末に次の1週間の見たい番組の録画を予約しておけば,都合がいい時にそれを見ることができる.そして,わずらわしいテープの操作も要らない.
こういう視聴方法をさらに便利にするため,EPG (Electronic Program Guide:電子番組ガイド)というものが出現した.テレビ電波の隙間を使って何日分かの番組表が送られ,それをテレビの画面で見て,リモコンで予約する.もはやわずらわしい8桁のGコードを入力することもない.ケーブル・テレビでも,EPGを使って何十チャネルもある番組の中から録画を予約することができる.こうしてタイムシフト視聴は第2世代に入った.
●タイムシフト視聴の普及でテレビ番組の質が向上!?
タイムシフトで視聴すれば,テレビの放映時間に縛られることなく,見たいときに見て,いつでも中断できる.途中で電話がかかってきたり,宅配便の配達が来たりしても,ドラマの山場を見逃さずに済む.また,聞き漏らしたところを聞き直したり,コマーシャルをとばしたりすることも自由だ.
リアルタイム視聴では,現在放映中の番組の中から選ぶしかないので,チャネル数が何十もあるケーブル・テレビの利用価値は限られる.しかし,タイムシフト視聴なら,できるだけ多くの番組の中から選びたくなるので,タイムシフト視聴の普及に伴ってケーブル・テレビの需要も増えると思われる.
そして,タイムシフト視聴が増えればテレビ番組も影響を受けるだろう.ニュース,スポーツ中継,ワイドショーなどは,主としてリアルタイム視聴向けの番組として現在のまま残るだろう.しかし,ドキュメンタリーやドラマはタイムシフトで視聴する人が増えるので,競争相手が増え,質の高いものしか視聴されなくなるだろう.そのため,番組制作者はカネをかけて番組の質を上げるようになるだろう.
テレビ番組の質の向上のためにも「タイムシフトで見よう!」
(酒井ITビジネス研究所)
*),**) DVD (Digital Versatile Disc:デジタル多目的ディスク),HDD (Hard Disk Drive:磁気ディスク装置).DVDレコーダーはVTRと同じように記録媒体の交換が可能だが,HDDレコーダーは媒体の交換が不可能.
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