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オーム社 「新電気」2006年2月号 掲載        PDFファイル

最新 情報家電事情 第1

 

安物買いで銭ためよう!?

酒井 寿紀

 

ユニデンやノジマが激安テレビを発売!

現在,日本の一般の電機メーカーの液晶テレビの価格は1インチ当たり1万円弱で,32型だと2030万円程度する.ところが,ユニデンという主としてコードレス電話機を北米で販売しているメーカーが昨年10月にこれを129,800円で発売した.1インチ当たり約4,000円で,市価の半額だ.この液晶テレビはHDTVのチューナーは内蔵してないが,その他の基本機能については他社製品と同等である.

しかしこの価格は海外では特別安いわけではない.例えば,米国のウォルマートは韓国製や台湾製の同等品を10万円前後で売っている.そして日本でもノジマが昨年10月,韓国製の同等品を99,800円で売り出した.この日本と海外の価格差はテレビに限らず,家庭向けエレクトロニクス製品全般に存在する.

 

なぜ日本製品は高い?

日本の製品がこのように高い理由の一つは日本人の高級品志向にある.メーカーはそれにつけ込んで,使いもしない機能をゴテゴテつけた,必要以上に性能の高い製品を高価格で売りつけようとする.

そして,日本人のブランド志向がもう一つの理由だ.いわゆる有名ブランドが好きで,値段が少々安いぐらいでは聞いたこともないブランドの製品は買おうとしない.

また,アフター・サービスに対する要求が非常に強いためでもある.サービスがいいということは,それだけコストがかかるので,メーカーはそれを価格に転嫁せざるを得ない.

 

平和な時代は終わる?

日本のユーザーが値段が高くても高品質の製品を求め,メーカーがそれを提供することによって高利益を確保しているなら,大変結構なことだ.しかし,こうして両者とも満足している時代は今後も続くだろうか?

世界のマーケットは一つになりつつあるので,海外で買えるものが今後日本で買えないわけがない.メーカーは機能や品質が違うと言うかも知れないが,実用に耐えれば安い方がいいと言う人も多いはずだ.日本のメーカーにとって平和だった時代は終わるだろう.

平和な時代が終われば,国際的な価格競争力のあるメーカーだけが生き残る.平和だった時代の家電メーカーが生き残れるかどうかは分らない.前記のユニデンは家電専門の子会社を設立して家電業界へ本格的に参入しようとしている.また,AV機器のメーカーの船井電機は,現在売上の90%が海外だが,日本でも低価格製品が要求されることが明確になれば,国内市場にも力を入れるだろう.

「安物買いの銭失い」という格言はエレクトロニクス製品に関してはあまり当てはまらない.今後エレクトロニクス製品を買うときは「安物買いで銭ためよう」という新格言()を実行しよう.その方がより有益なカネの使い方ができ,かつ日本のメーカーの価格競争力アップにも貢献できるからだ.

(酒井ITビジネス研究所)

 


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