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「日経ビジネス」 2005年10月24日号掲載
(掲載許可済み05/11/1)      PDFファイル

 

TVのネット配信に思う

 

1010日号で日本テレビ放送網の久保伸太郎社長に対する編集長インタビューを読んだ。同社が10月から始めるインターネットによる番組配信に関連して、久保社長は「(放送局は)番組内容もバランスの取れた総合編成が義務づけられています。我々はネット配信の世界にも、こうした規律を入れないといけないと考えているんです」と述べている。そして、多様な番組を曜日や時間帯ごとにどう見せるかについて、放送局には長い歴史で培ってきたノウハウがあり、「ネットで送り出す場合も、編成主導権がないとダメだ」と主張している。

しかし、ネットによる番組配信に、こうした従来通りの考え方が馴染むのだろうか。従来は1つの電波の中に、どんな番組をどう並べるかがテレビ局の腕だったのだろう。テレビ局にとっては、こうして作った“コース料理”を朝から晩まで食べ続けてくれる視聴者が最上の客だった。しかし、ネットによる配信ではVOD(ビデオ・オン・デマンド)が中心になり、視聴者は自分が食べたい“一品料理”を選んで食べるようになる。そうなれば、重要なのは個々の一品料理のうまさであって、それをコース料理に仕立て上げる腕は必要なくなる。

もちろん、ネット配信の時代にも、ながら族向けのコース料理の需要がゼロになるわけではない。しかし、需要の中心はコース料理から一品料理へと大きく移る。VODの時代には、個々の番組に対する評価が従来より厳しくなり、番組編成の重要度は下がる。技術が変われば、ユーザーの要求も変わり、企業もそれに対応しなければ時代に取り残されてしまうのではないか。

酒井寿紀 東京都、個人事業,65歳)


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