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20222月分 特集「戦争と疎開の思い出」

 酒 井 寿 紀    

 

どうしても 思い出せない 七日(なぬか)前

思い出す 七十年前 鮮明に

 

(以下、19453月~5月頃の思い出)

毎晩の 防空壕と 赤い空

仏壇に 干し柿一つの お葬式

 (1945310日の空襲で本郷の祖父死亡)

一夜(イチヤ)で十万 坊主も焼き場も 間に合わず

 

自転車の 国民服が 触れ回る

メガホンで 「クーシューケーホー ハツレーイ!」

庭の木に 六角形の 焼夷弾

街角に 防火用水 防空壕

この世とは こういうものと 思ってた

 

(以下、19456月~8月頃、埼玉疎開の思い出)

トラックで 荷物と共に 埼玉へ

ノミ退治 毎日我が家の 大仕事

裏山で 不気味に響く 発破の音(ネ)

 (父が中島飛行機で地下工場建設に従事)

 

一晩中 蚕が桑を ザーザーと

 

自転車の 父が夜道で 川に落ち

床の間に 並べて乾かす 米と札(サツ)

 

母子(ボシ)三人 山道二里の 家訪ね

低空で 戦闘機一機 急接近

母は子を 慌てて隠す 草むらへ 

村の子ら 飛ぶ日の丸に 手を振って

 

沼の鰻 刈込鋏で まっぷたつに

頭持つ 子供が鰻に 噛みつかれ

 

村の子の 「お山の杉の子」 朝夕に

 (以上、埼玉疎開の思い出)

 

(20222月分 おわり 1月分へ)


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