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No.25 酒 井 寿 紀 2000/12/22
前号に記したように、地価はまだまだ下がるだろう。そうすると何が起きるだろうか? そして、われわれはどうしたらいいのだろうか?
地価が下がると何が起きるか?
地価下落のわれわれの生活への影響は多岐に渡るが、ここでは最大と思われる問題をひとつだけ取り上げよう。
現在の日本経済の大問題のひとつは、いっこうに減らない金融機関の不良債権である。そしてその原因は、もとをさかのぼると、大半は地価の暴落によるものではないかと思う。ゼネコンに対する債権はまさしくそうだし、その他間接的に地価の暴落が関係しているものが多いようだ。例えばそごうは地価の高騰による含み益を原資にして、杜撰な収益計画で次々と店舗を増やしていったのだという。(日経ビジネス4月17日号 「怪物そごう水島会長の虚と実」)
そうだとすると、地価がまだまだ下がれば、不良債権は今後も増え続ける。
どの銀行も、ここのところ不良債権の処理に力を入れているが、なかなか減らない。大手銀行は92年度からの累計で50兆円以上の不良債権を処理してきたという。しかし、この9月の不良債権残高は17兆円で、92年以来まったく減っていない。(日経新聞12月18日)
この9月中間決算でも、半年間に約1兆7000億円の処理をしたが、不良債権残高は3月末とほぼ同じだという。(日経新聞11月25日)
ということは、地価が今後も今迄のように下がり続けるなら、こういうペースで不良債権の処理を続けていたのでは、永久に処理できないということである。まさに賽の河原の石積みである。
従って、まだまだ当分の間銀行の不良債権問題は尾を引くだろう。そしてその元凶であるゼネコンのバランスシートの問題も同じように長引くだろう。
長引かせない為には、どこかで荒療治が必要なのだが、これはなかなか難しい。というのは、現時点での不良債権を思い切って一括処理しても、地価が下がれば正常だった債権が問題債権になっていくからだ。現在持っている担保の価値が今後どう変動していくかを推定し、最悪ケースに対して手を打って行く必要がある。
的は止まっていないのだ。走っている獣や、飛んでいる鳥を鉄砲で撃つようなものだ。
いずれにしても、あまり業績に傷をつけないでできる範囲で処理していこう、等という考えでやっていたのでは、いつまでたっても片付かないことだけは確かだ。
地価の下落に対してわれわれはどうしたらいいか?
では地価の下落に対して、われわれはどうしたらいいのだろうか?
話は簡単である。「土地を買うな」、「持っている土地は売れ」、これだけだ。
ただし、自分が住む土地は、そこに住み続けるのであれば、地価が上がろうが下がろうが、自分にとっての値打ちには全く関係ない。問題になるのは相続が発生した時だけである。バブルの最中は、地価が上がりすぎて相続税が払えず、住んでいる土地を手放した人がたくさんいたようだ。
従って、自分が住む為の土地は買ってもいいし、現に住んでいる土地は売らなくてもいい。しかし従来のように地価の上昇による蓄財はもう望めないので、今後は賃貸物件のメリットを見直す必要があろう。
自分が住んでいる土地は別にして、遊休地は無論のこと、賃貸し用の土地や、貸し家はできるだけ早く手放した方がいい。問題は、売る為には買手を見つける必要があることだ。売った方が得だということは、買うのは損だということなので、買手を見つけるのはなかなか難しいはずだ。
従って、売る方は時価より安い値段で売る覚悟が必要である。そして世の中には、地価もそろそろ底値で、これからは再び値上がりするだろうと思っている人もいるだろうし、値下がり覚悟で自分の居住用の土地を買う人もいるだろう。こういう人を捜し出して買ってもらう必要がある。
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