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No.22                             酒 井 寿 紀                      2000/11/19


インターネットは習うより慣れろ!

 

11月6日に政府が発表したITの「基本戦略」の「重点政策分野」のひとつに「情報リテラシーの向上」がある。これを今後具体的にどのように進めようとしているのか、私は知らないが、ちょっと心配な点がある。

と言うのは、この「基本戦略」とは関係なかったのかも知れないが、リテラシー向上策と景気浮揚策を合わせて、「パソコン教室の受講券」を配ろうという話が、一時、堺屋経済企画庁長官等から出ていた。これは頂けなかった。つぶれてよかった。

だいたい、現在日本でインターネットを使っている約2千万人のうち、いったい何人がパソコン教室の受講等したことがあるだろうか? たとえ何回か受講したとして、はたしてそれがどれだけ実際に役に立っているだろうか?

パソコンの操作は「教えるより使わせろ」である。教わる側から言えば「習うより慣れろ」である。

私にとってはパソコンの操作よりVTRの録画予約の方がはるかに難しい。滅多に使わないからだ。たまに使う時はマニュアルと首っ引きである。他にもそういう人はいるだろう。しかしVTRの操作の講習会があるだろうか?

リテラシーの向上に同じ金を使うなら、小中学校にパソコンを配布する方がずっといい。そしてパソコンを「教える」のではなく「使わせる」のが重要だ。何も教えなくても、またマニュアルなんか読まなくても、子供はテレビゲームをすぐ使い出す。パソコンだって、インターネットだって、ものさえ与えてやれば、ほとんど何も教えなくてもすぐ使い出すだろう。

もちろんいろいろな高度な使い方がすぐできるわけではないが、最初から難しいことができる必要はない。そのうち友達同士で教えあって少しづつできるようになればいい。そしてちょっと慣れれば、大人にはとてもかなわないスピードでキーボードを操作するようになるだろう。

こうすれば確実に毎年百万人以上の情報化人間の増加が図れる。

とにかく、難しいことは言わずに、どんどん使うことである。

今の日本では、ウェブサイトを作る側の人さえ、インターネットをろくに使っていないのではないかと思うことがよくある。仕事や日常生活の道具として使おうとすると、不便なサイトが非常に多い。

ある車の仕様を知りたくて、その自動車会社のホームページを開いたら、車の写真のスクロールが延々と続いて、次のページへ行くこともできなかったことがある。これは極端にしても、意味もなく人形がチャカチャカ跳んだり跳ねたりして喜んでいるページが実に多い。時間の無駄で目が疲れるだけだ。

早く中身を見たいのに、表紙はほとんど真っ白で、日本語か英語かを選ばせるだけというのもあった。これが国際企業のページならまだしも、人口が10万人に満たない地方都市のサイトなので驚く。

銀行のホームバンキングで、振り込み等の証拠を取っておこうと思っても印刷できないものにも困ったものだ。また大銀行のページで、OSの文字の大きさの設定によっては、はみ出してしまって使いものにならないところもある。

これらは作る側の人がいかに使ってないかの証拠だと思う。使っているといっても、1日中パソコンの前に座ってネットサーフィンを楽しんでいるような使い方では困る。忙しい仕事や日常生活の中で、道具として使っているかどうかが問題だ。

暇つぶしにネットサーフィンばかりやって育ったパソコン坊やのなれの果てに任せっきりにするからこういうサイトができてしまうのだと思う。管理者の責任も大きい。

航空会社のサイトで1ページ目で日付と出発地、行き先を入力すると、該当するフライトが検索できるところがある。これなどは一番頻繁に使う人の便宜をよく考慮していると思う。

車や電気製品のページなら、仕様の諸元表にすぐたどり着けるのが一番いい。

とにかく現在のウェブサイトの写真や絵の半分以上は無用の長物で、時間の無駄以外の何物でもない。時間のロスがないなら美しいに越したことはないが、そういうわけにはいかないのだ。

こういう事態を打開するには、仕事や日常生活の道具としてどんどん使い、使いにくいサイトは使わないようにするか、クレームの集中砲火を浴びせるしかないと思う。

初等教育を受ける人口が極一部にすぎないような国と違い、日本では情報リテラシーの向上はたいした問題ではないと思う。会社でも若い人はみんな苦もなくインターネットを使っているのだ。ほっておいても時間さえ経てば情報リテラシーは充分に向上するだろう。それを加速するには小中学校でどんどん使わせることだと思う。


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