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No.18                             酒 井 寿 紀                      2000/07/30


株を持ってはいけない人

 

時と場合によっては、株を持たないことが最良の選択であることがある。「株を持ってはいけない人」と「株を持ってはいけない時」があるように思う。

「株を持ってはいけない人」の話から。

先ず、「絶対に損をしたくない人」は株を持ってはいけない。

株にはリスクがつきものである。絶対につぶれることはないと思った大銀行や大証券会社が消えてなくなり、老舗のデパートが危機に瀕している。中毒事件を起こした食品会社や放射能漏れ事故を起こした会社の株は暴落し、昨年一番値上がりしたネット株は今年は一番値下がりして、高値で買った人は大損をした。

今後も製品事故や特許の訴訟、経営の失敗や不祥事が跡を絶つことはない。従って、銘柄の選定やリスクの分散に充分注意を払っても、株で大損するリスクは決してゼロにはならない。ジョージ・ソロスをはじめ、古今東西のこの道のプロ中のプロがみんな失敗しているのを見ても、株で確実に利益を上げるのがいかに難しいかがよく分る。

従って、「絶対に損をしたくない人」は株に手を出してはいけない。これには、「最低限の生活資金しかない人」、つまり「損をしたら生活に困る人」も含まれる。株式投資のために借金をするのも、信用売買も結構だ。しかし、投資に失敗して、借金を返しても最低限の生活はできる範囲にするべきだ。株は遊興資金稼ぎの範囲にしておくのが賢明だ。

次に、「忙しすぎる人」は株を持ってはいけない。株の世界はいつ何が起きるか分らない。だから、いったん株を持ったら、常に市場の動き、その会社の状況をウォッチしてないと危ない。しかしこれは、働き盛りの一般の人にはなかなか難しい。従って、働き盛りには本来の自分の仕事で金を稼ぎ、年を取ってある程度時間に余裕ができてから株式投資をはじめるのが賢明だ。60年代から80年代のような右上がりの成長が続くことは、今後は期待できないので、株を買ってほっておいたら、いつにまにか金持ちになっていた、というような話はもうなくなるだろう。

似たような人に、「ボケた人」や「死にかけた人」がいる。いずれも市場の動きをウォッチしたり、タイムリーに株を売買する能力がなくなった人だ。ボケはじめたら、本当にボケる前に株は全部処分するべきだ。入院したり寝込んだりして、株の売買ができなくなった場合も同じだ。何週間にも渡って、証券会社と連絡が取れない未開地を旅行する人も同類である。

株を処分することによって、儲けそこなうことはある。しかし、株を持っていなければ、株で損をすることは絶対にない。今後は、判断応力を失った人が漫然と株を持っていて利益を上げることは極めて難しいだろう。それより株を持ち続けて損をするリスクの方が遥かに大きい。

前号に記したように、今後の低成長率の世界では、麻雀と同じように、誰かが儲けるということは、他の誰かがそれだけ損をするということだ。みんな儲けようと必死になって知恵を絞っているのに、ボケた人や死にかけて判断力を失った人が儲けられるわけがない。

これにはもうひとつ、「死ぬ時は株を残すな!」という意味もある。会社のオーナー等は別にして、一般の人は遺産に株を残さない方がよい。遺産を相続する人が株を持ったことがなければ、「忙しすぎる人」や「ボケた人」と同じように、適切な取り扱いができなくて、遺産を減らしてしまうリスクが大きいからだ。

株は、死んだ時の評価額と相続人が受け取る時の評価額が大きく違うことがあるので、遺産分割の時にもめることがある。そのためにも遺産に株はない方がいい。

「ボケる前に株は売ろう!」そして「死ぬ前に株は全部処分しよう!」


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