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No.13                              酒 井 寿 紀                      2000/05/01


NASDAQ指数に注目!

 

最近の日本市場は米国市場の「コピー相場」と言われる。米国市場といっても、Microsoft、Cisco Systems、Sun Microsystems、Intel等のハイテク企業やネット株が集まっているNASDAQの影響が強い。

昨年1年間で、NASDAQ指数は1.9倍になり、日本でもそれを受けて、ネット株等が急騰した。日本ではまだインターネット関連事業がそれほど業績に貢献してないのに、株価だけアメリカの真似をして先走ったところが多いようだ。

こういう長期的な「コピー」だけでなく、短期的な「コピー」もある。

例えば、この4月のTOPIXについてみると、3月31日から4月27日までのアメリカでの19営業日中、NASDAQが上がったのは9日あるが、そのうち89%の8日は翌日のTOPIXも上がっている。NASDAQが下がった残り10日については、30%の3日しか翌日のTOPIXが上がっていない。NASDAQとTOPIXがまったく独立なら、これらふたつのパーセンテージは同程度になるはずだ。実際の数値はこのふたつの株価指数が4月には密接に連動していたことを示している。

こういう緊密な関係があるので、NASDAQ指数の動きに注目していれば、長期的にも、短期的にもTOPIXの動きをある程度予想できる。

しかしここで気をつけないといけないことがある。それはNASDAQはものすごく値動きが激しいということだ。

例えば、NASDAQの4月3日の終値は4,224ポイントだったが、4日には一時3,649ポイントまで575ポイント(−13.6%)下がり、その後市場が閉じるまでの最後の2時間位でその大半を回復し、結局4,149ポイント、74.8ポイント安(−1.8%)で終わった。

これは、急な値下がりを検知してプログラム売買が売り指令を出し、その結果下がりすぎた為、最後の段階でプログラム売買が逆の指令に切り替わった為だということだ。(当日CNNfnがインターネットで配信したニュースによる) 大勢のアメリカ人が同じプログラムで売買を実施している為、売る時も買う時も一斉になり、反応が振り切れてしまうのだ。

しかし、このように1日の間に回復する時はまだよい。

その後も値下がりしたNASDAQは、4月14日の金曜日に1日で過去最大の356ポイント(9%)下がって、3,321ポイントになってしまった。3月10日の最高値5,048ポイントから、1ヶ月ちょっとで34%の下落である。これがはたして回復するのか、またはさらに下がって本格的ベアマーケットになるのか、アナリストの意見が分かれていた。日本の株価への影響の大きさについてもまったく違う意見が新聞を賑わしていた。

この過去最大の暴落の直接のきっかけは同日アメリカの労働省が発表した3月の消費者物価指数の前月比0.7%という高い上昇率だった。本格的なインフレーションの到来という憶測が株価の全面安を招いたのだ。しかし、航空運賃のアップ等も含めると、その半分以上は一時的な原油価格のアップによるものと推定され、本格的なインフレーション時代に突入するとは思えなかった。株価はまだ多少下がっても、割合早い時期に回復に向かうだろうというのが私の判断だった。

週明けの17日の月曜日には日本で売りが殺到し、10%安位で取引が始まった銘柄が多かったようだが、やがて落ち着き、同日夜のアメリカ市場が回復に向かうと、翌日から日本市場も回復に向かい、3日間で17日の暴落を取り戻した。

このようにNASDAQ指数は振り切れるので、慌てていわゆる「ろうばい売り」に走ることがないよう気をつける必要がある。とは言っても、現在のNASDAQ市場は明らかに過熱状態なので、ちょっとしたきっかけで本格的ベアマーケットに突入してもおかしくない為、こういう時の判断は非常に難しい。

今年に入って、テクノロジー市場の暴落で、ジョージ・ソロスのクォンタム・ファンドは22%資産を失い、運用責任者が辞任して、今後投資方針を変更するということだ。

しかし、最近のテクノロジー市場の過熱ぶりからすれば、20%程度の調整は当然起こり得ることとして考えておく必要があったのではないかと思う。確かに最高値からの34%の下落は予想を越えていたかも知れない。しかし、これは昨年11月の水準に戻っただけとも言える。そして、4月28日の終値は3,861ポイントで、最高値マイナス24%迄既に回復しているのだ。

昨年末からハイテク市場に参入して、ひどい目にあった投資家も多いと思う。従って、これから先の回復には時間がかかるだろう。しかし、今回の大調整は、アメリカ市場の健全性を保つ上で、必要なステップだったのだと思う。従って、あまりに早い回復は調整の意味が減るので好ましくない。そしてこういう調整は、今後も何回も必要になるだろう。アメリカでも、日本でも。 


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