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No.9                             酒 井 寿 紀                      2000/4/9


証券関係者の話にご注意!

 

ここで証券関係者とは証券会社や投資関係の雑誌社の人、投資コンサルタントとか株式評論家といわれる人達のことである。

最近の投資関係の雑誌の2000年の特集記事の紹介文を見ると、例えば、

「日本版401Kの導入を間近に控え、資産運用の柱として株式投資は必須。…テーマ・材料も2000年を目前にして、情報技術、通信、環境、介護関連など豊富。さあ、今こそ細心かつ大胆な株式投資で資産を倍増するチャンスだ!」(マネージャパン1月号「資産倍増株式投資術」)、

「大きなトレンドで見れば、景気、株価は上昇基調に転じ、資産運用の環境は転換点を迎えようとしている。十分な運用成果を手にするには、このうねりを先取りしたい」(日経マネー 2月号「資産倍増大作戦」)、

等、「今年株を買わない奴は馬鹿だ」と言わんばかりの文字が躍っている。

一方で最近の日経新聞に、バブル崩壊直後に、自分でも疑問を感じながら、「株はすぐ値を戻しますから」と、お客に株の購入を勧めてきて、現在自責の念にさいなまれている元証券会社社員の回顧談が出ていた。

こういう人たちの話や雑誌記事にはどういうスタンスで臨んだらいいのだろうか?

この人たちの立場で考えてみよう。

証券会社の人達は、大勢の人が株を買ってくれれば、会社の手数料収入が増え、増益になってボーナスも上がる。歩合給がある場合は直接自分の収入が増える。株を買った人が儲かっても損をしても関係ない。反対に株を買う人が減れば、会社は減収減益になりボーナスも減る。

投資関係の雑誌社の人も、株を買う人が増えれば、雑誌を買う人も増え、会社が儲かるようになってボーナスも増える。

そういう雑誌に記事を依頼される投資コンサルタントとか株式評論家は、株を買う人が増えるような景気のいい話をすれば、雑誌社は喜んで、記事の注文が増える。いつも悲観的な話しかしない評論家はこういう雑誌社から敬遠される。

これはいいとか悪いとかいう話ではない。経済原則にのっとった人間の行動なのだ。従って、もし悪い者がいるとすれば、こういう現実を無視してこの人達の言うことや書いたものをそのまま鵜呑みにして信用する方だ。

ベテランのセールスマンの話に乗せられて、つい要らないものまで買ってしまうのと同じである。悪いのはセールスマンではなくて買う方だ。セールスマンの腕は誉めてあげるべきだ。

証券関係の人達も、生活がかかっているし、収入はだれでも多い方がいいので、決して好き好んで人を欺いているわけではないことを理解してあげるべきだ。

従って、この人達の景気見通しの話も、政府関係者の話と同様に、常に下駄を履いていることを忘れてはならない。そして、景気がよくなる可能性の裏には、悪くなる可能性もあり、ある特定の銘柄の株価が上がる可能性の裏には下がる可能性もあることに気をつけないといけない。景気が悪くなる可能性や、株価が下がる可能性については、この人達はあまり触れたがらないので特に注意する必要がある。

これは、景気の現状認識や先行き見通しに限らない。政府の政策に対する要望についても同じである。

先日日経新聞に、ある証券会社の人が、

「当面は現在の景気対策の手を緩めるべきではない。ここで手を緩めたら今迄の努力が元も子もなくなる。財政再建はあくまで景気が本格的に回復してからにするべきだ。景気さえ回復すれば財政再建は容易である」

という趣旨の文を書いていた。

この人に限らず、証券関係の人には同様な意見の人が多いようだ。しかしこれは本当にうまくいくのだろうか?

一方で、水谷研治氏のように、「財政危機は極めて深刻な状況である。少子化が進行するだけに、もはや先送りはできない。実情を直視して、どれほどの犠牲を払ってでも、即刻、財政の再建に着手する必要がある。その結果、生ずる景気の急落を、国民は覚悟を決めて受け止めなければならない」(「週間 東洋経済」 99/12/25号)というような、正反対の意見もある。

ここでは、いずれが正しいかは取り上げないが、証券関係の人の話には、政策提案についても、片寄りがあることは否定できないと思う。そしてそれは、その人達が置かれている立場上当たり前のことなのだ。

政府がこの人達の意見を尊重しすぎることがないように望みたい。


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