home > Tosky's MONEY >

title.gif (1997 バイト)

No.5                             酒 井 寿 紀                      2000/3/20


バブル崩壊のリスク回避策

 

今後も起きるであろうバブル崩壊のリスクを最小限に押さえるにはどうしたらいいだろうか?

地震の被害から身を守るには、地震が起きる地帯に住まないのが一番いいのと同様に、バブル崩壊から財産を守るには、株を持たないのが一番いい。

そんなことを言われたって全く役に立たない、と言われるかも知れないが、もしバブルが崩壊する時期が分かれば、誰だって事前に株を全部売ってしまうだろう。従って、いよいよ危ないと読んだら、株は全部手ばなすべきだ。読みがはずれたときの「儲けそこね」を惜しんではならない。

三井信託銀行の投資顧問の部長は、バブル崩壊の直前の89年10月に、読みがはずれたら辞表を書く覚悟で、1兆円の日本株をすべて売却する決心をしたと新聞に出ていた。(日経新聞 2000年3月6日) 究極のバブル対策はこれしかない。

アメリカの著名な投資家ウォーレン・バフェットの投資哲学は、「狙いを定めて株を買い、それをいつまでも持ち続けろ!(Buy-and-Hold)」だという。これは、戦後のアメリカや、80年代までの日本には当てはまったかも知れないが、この哲学を信じて1990年前後に日本株を持ち続けた人はひどい目に会っている。

今後は右上がりの成長ばかり続かないのでこの哲学はもはや通用しないと思う。株の世界には古今東西に通用する万能の戦略など存在せず、時と場合で柔軟に戦略を変える必要がある。

いよいよ危ないと読んだら全部売却するのが一番安全だ。しかし、現在の日本の「ネット株」のように、まだしばらくはバブルが続くかも知れないという時はどうしたらいいだろうか?

リスクを極力回避するためにはできるだけ株を持っている期間を短くした方がいい。バブル株が少し下がった時、いわゆる「押し目」で買って、値を戻した時に売ってしまうのがよいと思う。例えば高値から10%以上下がったら買って、高値を戻したら迷わず売るのである。現在の「ネット株」は値動きが激しいので、これを繰り返せばかなりの利回りが確保できると思う。

いわば「ヒットエンドラン」だ。と言っても野球の「ヒットエンドラン」ではなく、車の「当て逃げ」である。ホームランは狙わず、シングルヒットで我慢し、当てたらすぐ逃げて、できるだけ株の保有期間を短くし、バブル崩壊のリスクを避けるのである。

これは投資の正道ではなかろう。しかし正道だろうと何であろうと、資産が半分以下になってはかなわない。そして、バブル株をみんなが買って持ち続けたら、どんどん値が上がるだけだから、高値を回復したら売る人が多い方が、バブルの冷却、ひいては経済の健全な発展のためにもいいはずだ。

「ヒットエンドラン」作戦を取っても、運悪くバブル崩壊に遭遇する可能性が充分ある。その時の被害を最小限に食い止めるためには、バブル崩壊を引き起こす可能性があると思われる出来事が起きたら迷わず株を処分することだ。

例えば、最近の例では、アメリカの予想を超える利上げ、グリーンスパン議長のバブル警戒発言、ニューヨーク市場の株価の急落、昨年末のY2K問題、速水日銀総裁の量的金融緩和に対する難色発言、等がある。

これらがバブル崩壊を引き起こす可能性がある程度以上あると読んだら、「儲けそこね」を恐れず株をいったん売ることだ。幸いにしてバブル崩壊に至らなければ買い戻せばよい。多少の「儲けそこね」はあるかも知れないが、バブル崩壊の被害に比べれば問題にならない。「儲けそこね」はリスク回避のために必要なコストと思わなければならない。

例えば、昨年末には、Y2Kのリスク回避のために株をいったん処分する人が多く、株価が急落する可能性があったと思う。特にアメリカでは、発電所の事故に備え自家用発電機まで用意した人がいると聞いて、その可能性がかなりあるように思えた。しかし実際には、処分した人は予想外に少なく、政府がY2K対策のために潤沢に用意した資金が株の購入に回ったのか、株価は逆に急騰した。結果的には、早めに処分した人は損をし、失笑を買ったかも知れないが、こういう異常な急騰での儲けを期待してはいけない。この急騰は1月に入ってすぐ元に戻ったので、その時点で買い戻せば、資産の目減りはほとんどなかったはずだ。

株の世界でも「君子危うきに近寄らず」の精神が重要だと思う。

そして、リスクを回避するためにはある程度のコストを負担する覚悟が必要である。


Copyright ( C ) 2000, Toshinori Sakai, All rights reserved  (1)