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No.2 酒 井 寿 紀 2000/3/7
「ネット株」まがいに御用心
今最ももてはやされているのは「情報通信」の中の「ネット株」だが、何が本当の「ネット株」かは必ずしも明確でないので注意が必要だ。インターネットとはあまり関係がないのに、関係があると誤解されているのか、「ネット株」ブームでいっしょになって株価が舞い上がっているものがあるようだ。
「情報通信」ではあるがインターネットには無縁のものにはどういうものがあるだろうか?
先ず、「通信」の中では、昔からの電話の世界がある。例えば電話機等である。
また、テレビ用の電波を伝える伝送装置、放送衛星等もそうだ。
「情報」では、従来からの大型コンピュータ、パソコン等も、インターネットに接続されないものは無縁だ。従って、大型コンピュータのソフトの設計受託、パソコンのパッケージソフト等もインターネット用のもの以外はやはり無縁である。
このように「情報通信」の中にもインターネット関連以外のものがたくさんあり、その区別は必ずしもはっきりしないので注意が必要である。例えば、従来からの電話回線もインターネット用に使われればそれと関係ができるし、もともとはテレビ用のCATVも今やインターネット用に使われ出している。
投資家の立場として、さらに面倒なのは、従来の「情報通信」関連の企業が次から次へとインターネット関連のビジネスに参入しつつあることである。現在インターネットを最重要テーマとして掲げている、あのマイクロソフトでさえ、本格的にインターネットに取り組み出したのは1995年で、それまではろくに力を入れていなかったのだ。現在のネット関連企業が本分野に参入したのは大半がこの数年の間である。
市場動向を見て、取り残されまいと、今後ますます参入する企業が増えるだろうが、一方で、まだこの新分野にほとんど興味を示していない従来からの「情報通信」関連の企業も多いので、よく見極めないと危ない。
それでは、ネット関連企業にはどういうものがあるのだろうか?
先ず、NTT、DDI等のいわゆる「キャリアー」がある。いわば「電線屋」であるが、「電線」といっても従来の「銅線」だけでなく、これからは「光ファイバー」、「衛星通信」、「CATV」が入ってくる。
次に、この「キャリアー」上でインターネットのネットワークサービスを提供する、「プロバイダー」等の企業がある。
また「Yahoo!」等、膨大になったインターネット上の情報の「道案内」をしてくれる、いわゆる「ポータルサイト」がある。
そして、これらの企業に必要な、ルーター等のネットワーク機器、クライアント/サーバー装置等を提供するハードウェア、ソフトウェアの「メーカー」がある。
これらの業種が、インターネットのユーザーに、必要な道具を提供する、いわば「プラットフォーム提供業」の主なものである。CATVや携帯電話の会社のように「キャリアー」と「プロバイダー」を兼業するもの、従来のパソコン通信が発展して「プロバイダー」と「ポータルサイト」を兼業するもの等、複数の業種を一つの企業が兼業しているものも多い。
また「メーカー」が提供する機器を使って「プロバイダー」が必要なシステムを組み上げる、システム・ハウスとかコンサルタント等、これらに付帯する業種もある。
そしてこのプラットフォームを使って各種のサービスを提供する企業は数限りなくある。
自動車、電気製品、食料品、書籍、CD等の販売
乗り物やコンサート等のチケットの販売
銀行、証券、保険の業務
書籍、雑誌、新聞、音楽等のコンテンツのオンライン配信
等々である。
また、これらのコンテンツに掲載する広告の代理店等、これらに付帯するビジネスもある。
これらのビジネスのどれかを手がけているか、どの程度手がけているかをよく調べて、本当の「ネット株」と言えるかどうかをよく見極める必要がある。
パソコン用のゲームソフトや年賀状の印刷ソフトのメーカーは、それだけでは「ネット株」とは言えない。
ただし、今日「ネット株」ではなくても明日は分らない。とにかく変化の激しい世界なのだ。そして他人より少しでも早く変化を察知した人が投資に成功するのだ。
くれぐれも「ネット株」まがいには御用心。
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