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No.1 酒 井 寿 紀 2000/3/5
何故「ネット株」か?
昨年来、「情報通信」が今後の投資の最も有望な分野と言われ、事実昨年はこの分野の代表企業が株式市場全体を引っ張ってきた。ところが今年に入ると、「昨年のように、情報通信関連という一つのテーマに集中した相場展開を今年は期待できないでしょう」(野村證券「Nomura Monthly Letter」 3月号)というような声も耳にする。
もう「情報通信」は山を越したのだろうか?アメリカのNASDAQでもまだまだ「情報通信」が中心になって、相場全体を盛り上げているのに、アメリカを追いかけている日本の「情報通信」はもうあまり期待できないのだろうか?そもそも何故「情報通信」がこれほどもてはやされるのだろうか?
ひとくちに「情報通信」といっても、昔からある電話会社、30〜40年前からあるコンピュータ関連の企業等、いろいろあるが、今もてはやされているのはインターネット関連企業、いわゆる「ネット株」である。では何故「ネット株」なのだろうか?
第2次大戦後、日本では、家電、自動車、大型コンピュータ、パソコン等の産業が、それぞれ10〜20年のレンジで、勃興し、成長し、成熟して、それぞれ数兆円から10兆円規模の産業となり、日本の経済成長を支えてきた。そして次に最も期待されるのがインターネット関連なのである。
インターネットによって、いつでも、誰でも、どこからでも、全世界の人と即座に交信できるようになった。また、各国の最新の統計や、企業情報、学術情報をいつでも、誰でも、無料で見ることができるようになった。また、自宅にいながらにして、本から車まで買え、飛行機やコンサートを予約し、そのチケットを買うこともできるようになった。これは人類の歴史上はじめてのことである。
インターネットが一般の社会で本格的に使われ出してからまだせいぜい5年程度だ。今後さらに10〜20年に渡り、われわれの生活を隅々まで変えていくだろう。
そしてその影響はいわゆるインターネット関連企業に限らない。自動車産業は高速道路を増やし、ドライブインやガソリンスタンドを繁盛させた。インターネットの波及効果は多分これと比較できないほど大きく、金融業にも、流通業にも、広告業にも根本から大変な影響を及ぼすことになるだろう。
要するに、「ネット株」は1年や2年で下火になったりするものではなく、今後まだ5〜10年に渡って成長し成熟するものなのだ。
冒頭の、「今年は情報通信だけでなく他分野にも投資対象が移る」という意見は、「情報通信は今後期待できない」ということではなく、「昨年の情報通信一極集中に対する一時的調整が入る」と理解するべきだと思う。
株価の見通しを読むのは本当に難しい。私のようなずぶの素人は論外として、プロ中のプロがみんな失敗しているのを見てもその難しさが分かる。この失敗のリスクを少しでも下げるには、やはり長期的な成長分野に投資することだと思う。そうすれば、一時的な株価の下落があっても必ず戻る。
世の中には、新技術分野はリスクが大きいので、避けて、景気循環型の成熟産業を選ぶ方が賢明だ、という意見もあるようだ。これも一つの考えと思うが、現在のように成熟産業の停滞が長期間続くとリターンの確保が難しい。
また証券会社や投資の評論家は、今後は「環境」だとか、「バイオ」だとか、もうそろそろ「リストラ株」も期待できそうだとか、いろいろなことを言うので、こういう話を全部聞いていると何がいいのかさっぱり分からなくなってしまう。これらの説も決して間違いではないと思うが、数兆円以上の市場に成長するものとは思えない。
証券会社や投資のプロには、彼らの立場があって、いろいろな好みのお客さんに対し、一つの品物だけ薦めるわけにはいかないのだ。店屋の店員と同じである。彼らの立場も理解してあげる必要がある。顧客は自分には向かないと思う話には耳を貸さなければよいのだ。
ただもちろん、「ネット株」にもつぶれる会社があることはいつも念頭に置いておく必要がある。アメリカでもつぶれてしまったり、つぶれてしまいそうなインターネット関連の会社が多い。従って、銘柄の選定とリスクの分散には充分注意を払う必要がある。これについては改めて触れたい。
また、現在の「ネット株」はまさにバブル状態である。従って、ちょっとしたきっかけで暴落するリスクをはらんでいることも忘れてはならない。リスクにはベンチャー企業の社長の急死等も含まれる。
もう一つの問題は、本分野の主力銘柄の1売買単位が高すぎることだ。ヤフーのように1億円以上もするものは別格としても、3〜4百万円ないと買えないものが多い。買いたいものが買えない場合は、代わりに安い株を買うのでなく、「情報通信」、「ネット関連」を集中的に組み入れている投資信託を選ぶのも一つの方法と思う。
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