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No.502                     酒井ITビジネス研究所  酒井 寿紀                      2005/03/19


低成長時代の最も確実な投資は?

 

今後の日本経済には、もはや1960年代から80年代にかけてのような高度成長は期待できない。と言うことは、平均株価も、もう当時のようには上がらないということだ。たとえ一時的に急上昇したとしても、それは実体経済の成長を伴わないバブルで、いずれ下がる。大企業の株を買って保持し続ければ、多くの場合値上がりが期待できたような、よき時代はもう終わったのだ。

では、今後はどうやって株の運用をしたらいいのだろうか? 株式市場全体の時価総額は伸びなくても、もちろん、値上がりする銘柄と値下がりする銘柄があり、また、新規に上場する企業もある。従って、一つは銘柄を厳選することだ。しかし、企業の業績の将来を予測するのは至難の業だ。もう一つは、銘柄はさておき、株を買うタイミングを選ぶことだ。具体的には、事故や不祥事などで一時的に過小評価を受けている銘柄を選ぶのである。実例を見てみよう。

事故や不祥事で株価はどうなった?

ブリヂストンの子会社の米国ファイアストンは、同社製のタイヤを使った車の事故が多発したため、20008月に、1,440万本のタイヤのリコールを発表した。そのため、ブリヂストンの株価は約2400円から1400円に急落した。このリコールによる損失は、損害賠償の賠償金、リコールの費用などを含めて、1,000億円に膨らんだという。しかし、約4年後の2004年半ばには株価は2000円を回復した。20039月に起きた栃木工場の火災などのため、回復までに4年を要した。しかし、もし1400円で買っていれば、4年で40%以上値上がりしたわけなので、資金運用効率上も悪くはなかった。

20039月の栃木工場の火災の損害は400億円に達したといわれる。この火災に対する株価の反応は鈍かったが、それでも1700円近くしていた株が、10月には約1400円まで下がった。しかし、20044月には事故前の株価を回復した。

日本ハムは、2001年にBSE問題が起きた際、輸入牛肉を国産と偽装して政府に買取り申請をした。これが20028月に発覚し、会長、社長とも辞任に追い込まれる事態になった。そのため、株価が約1450円から約800円まで急落した。しかし、2年後の20049月には事件前の株価に戻った。

200210月に、三菱重工の長崎造船所で建造中だった豪華客船ダイヤモンド・プリンセスが火災を起こした。そのため、同社の株価は約320円から約260円に下落した。しかし、翌月には約310円まで回復した。

三井物産は、200411月に、ディーゼル車の排ガス浄化装置について虚偽のデータを東京都に提出していたことが判明した。そのため、株価が約940円から850円に下がった。しかし、約2ヶ月後には問題発生前の株価に戻った。

ドン・キホーテは、200412月の連続放火事件で、3店が閉鎖・休業になり、また、多数の店舗で消防法違反が指摘された。そのため、株価が約6500円から5000円以下に急落した。しかし、20053月に入って約6300円まで回復した。

このように、事故や不祥事で下落した株価は、遅かれ早かれ回復したものが多い。株を買うタイミングをうまくつかめば、かなり確実に値が上っている。

再起不能なケースにご用心

値上がりが期待できるケースが多いと言っても、ダメージが大きくて後遺症が長引いたり、事業規模を大幅に縮小せざるを得なくなったり、つぶれてしまったりしたケースもあるので注意が必要だ。

例えば、雪印乳業は、20006月に黄色ブドウ球菌による食中毒事故を起こした。さらに、20021月に、子会社の雪印食品が、BSE問題に絡んで輸入牛肉を国産と偽装したことが発覚し、雪印食品は20024月に解散に追い込まれた。

この一連の事件で、20003月期には12900億円だった雪印乳業の連結売上高は、20043月期には3200億円と、4分の1に激減した。そして、1000円以上していた株価は、2002年には一時200円以下と、5分の1以下に下がった。その後、2003年には300円台に回復したが、現在も300円台が続いている。

また、有限会社だが、20042月の鳥インフルエンザの事件で対応を誤った兵庫県の浅田農産は、会長夫妻が自殺し、息子の社長が逮捕され、顧客の信用を失墜して廃業せざるを得ないはめに陥った。

従って、株を買う場合は、事故や不祥事を起こしたとは言っても、基本的な経営姿勢や経営戦略に問題はなく、また、事故や不祥事が長期的に事業基盤を揺るがすほどの規模でないことが重要だ。

不運な企業の救済は投資家の立派な仕事

他人の不幸につけこんで金儲けをするのはけしからんと言う人がいるかも知れない。また、法令に違反したり企業倫理に反する行いをしたりした企業の株を買って支援するのはとんでもないと言う人もいるだろう。しかし、全知全能でも聖人君子でもない人間の集団が仕事をしている限り、火災や製品事故、そして不祥事は絶えることがない。企業としては、それを乗り越えていかなければならない。

従って、不幸にして火災や製品事故を起こし、株価が下がってしまった企業の株を買って支援するのも、投資家の立派な仕事である。とは言っても、市場から退場すべき企業を支援すべきではない。やはり、事故や事件から立ち直ることを期待したい企業の支援にとどめるべきだ。


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