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No.104                            酒 井 寿 紀                      2001/02/18


iモード開国!? (コンテンツ)

 

NTTドコモの iモードが大変な勢いで伸びている。ドコモのウェブサイトによると、2月11日現在の契約者は1,911万人いるという。ドコモのシェアは60%台らしいので、携帯電話でのインターネットの利用者の総数は3,000万人程度になるのだろう。これは、パソコンで正規のインターネットを使っている人の数をすでにはるかに追い越しているだろう。

またドコモによると、昨年12月には iモードの公式サイトが1,340、一般サイトが33,100になったということである。そして利用者数もサイト数もまだまだ伸びそうだ。

ドコモは現在 iモードの世界では、通信回線の提供、プロバイダ業、携帯電話の販売、ブラウザの提供、ポータルサイトの運営をすべて独占している。正規のインターネットではざっと5業種の企業が分担していることを1社で全部やり、他社の介入を許さないのだ。

ドコモの国は鎖国状態なのだ。この状態は今後も続くのだろうか?

2月5日の日経新聞に、総務省がドコモの独占を牽制する政策を検討中であるという記事が出ていた。それは、一定の基準を満たしたサイトには、現在の公式サイトと同じように、ドコモのポータルサイト「i Menu」への登録、ドコモによる料金徴収代行等ができるようにしようというものらしい。しかし、こんなことだけでうまくいくのだろうか?

現在、正規のインターネットのサイトと iモードのサイトはまったく別の世界になっている。しかし同じ内容を両方で見ることができた方が便利なものも多いはずだ。

例えば観光地の情報を家で調べる時は、正規のインターネットの情報をパソコンの大画面で見たいし、そこに着いたら、その付近のレストランや店屋を携帯電話で調べたいだろう。

また株の取引にしても、自宅ではパソコンで株価チャートや業績推移を見ながら売買したいし、出先では携帯電話で現在値だけをチェックして売買したいだろう。

もちろん携帯電話の画面は小さいので、パソコンと同じ内容を表示することはできない。パソコンの画面の絵や写真を省いて簡略化したものになるだろう。人によっては携帯電話用の簡略化した画面をパソコンで見たい人もいるだろう。例えば天気予報や電車の乗り換え駅の情報は携帯電話用の画面で情報量は充分であり、この方がアクセスが速い。

そして、閲覧する機器はパソコンと携帯電話だけでなく、PDAやカーナビも必要に応じて使い分けられるようになるだろう。商用で出張中に会社のデータベースをアクセスするには、携帯電話の画面では小さすぎるので、PDAが主流になるだろう。そしてPDAを携帯していればウェブの閲覧にもメールの処理にもこれを使うようになるだろう。

このように、同じ内容をいろいろな機器から見ることができるようにするための第1の問題はウェブの画面の記述言語の統一である。現在 iモードで使われているCompact HTMLという言語は正規のインターネットの記述言語のHTMLを簡易化したものなので、ほぼこの要求を満足する。現に iモードの一般サイトはパソコンでも一応閲覧できる。しかし欧米の通信業者やKDDIが使っているWMLはこの要求を満たしていないので問題がある。

次世代の携帯端末用のウェブ記述言語はXHTML Basicと呼ばれ、次世代のインターネットのウェブ記述言語XHTMLのサブセットだという。前にWMLを標準に定めたWAP (Wireless Application Protocol) Forumもこの言語を次世代の標準に採用し、ウェブの規格制定の組織W3C (World Wide Web Consortium) もこれを推薦することになった。また、WMLのブラウザの大手メーカーである米国のOpenwave社もすでにこの言語のサポートを発表している。従って、言語の統一の問題は解決に向かっている。

第2の問題は iモードの公式サイトの公開である。現在公式サイトはパソコンやPDAから見ることができない。ドコモが囲い込んで鍵をかけてしまっているのだ。これは不便だ。

総務省は公式サイトの基準を緩めて、実質的に公式サイトを増やさせようとしているようだが、もうすでに一般サイトが3万以上あり、今後もどんどん増えると思うので、1企業が審査すること等まったく不可能になるだろう。要するに公式サイトはもう要らない。

有料サイトにとっては、公式サイトになれば、ドコモが料金徴収を代行してくれるので便利だ。見る方も、手続きが簡単なので、有料でもつい見てしまうのだろう。しかし、新聞社の立派なサイトが正規のインターネットではほとんど無料なのに、はるかに情報量が少ない携帯電話のサイトが有料なのはどう考えてもおかしい。今後、正規のインターネットと同じように、広告収入で運営する無料サイトがどんどんできれば、有料サイトは減るだろう。

残った有料サイトの料金徴収は、ドコモがやるなら、ドコモの携帯電話以外からのアクセスに対しても同じように徴収を代行するべきだ。もちろん、一般サイトですでに行われているように、他の企業が料金徴収を代行してもよい。

サイトの囲い込みは、サービス開始時の利用者獲得には有効だったろう。しかしもはやその役割は終わった。インターネットのコンテンツはどこからでも見ることができるのが基本だ。サイトの囲い込みで利用者を増やそうというのは10年以上前のパソコン通信の世界の発想だ。

今迄は、ドコモの携帯電話以外から iモードのサイトを見る人は少なかったから、囲い込まれる方にとってあまり不都合はなかった。しかし今後、記述言語が標準化され、技術的にはどのパソコンやPDAからも見ることができるようになると、囲い込まれたサイトは閲覧者が減ってしまう。従って、囲い込もうとしても、特別な利益供与でもなければ、サイトの提供者は一般サイトに逃げ出していくだろう。

第3の問題はポータルサイトの開放である。現在の iモードの初期画面はドコモのポータルサイト「iMenu」しか表示しない。他のポータルサイトを使おうとすると、私の携帯電話では最低2操作余計に必要だ。どのポータルサイトも平等に扱うようにするべきだ。

以上の三つの問題を解決して、iモードのコンテンツの世界は開国されるべきだし、いずれそうなるだろう。もうひとつの鎖国である電話機の販売については次号で取り上げたい。


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