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   (2002)

コロナの恩恵(1) ・・・ビデオ会議

    

酒井ITビジネス研究所   酒井 寿紀    2020/5/4

(訂正1 20/5/5)

"Zoom"のユーザーが4か月で30倍に!

コロナウィルスが世界中を席巻している。これを止めるには、現在のところ、経済活動を犠牲にして人と人の接触を減らすしか方法がないようだ。そのため各国で、正常な経済活動が妨げられ、存続に苦しんでいる企業が多い。

しかしその中で、例外的に事業が拡大している企業グループがいくつかある。いわばコロナの恩恵に浴しているわけだ。それを何回かに分けて取り上げたい。第1回は「ビデオ会議」である。

満員電車での通勤を避けるため、政府も企業も自宅での勤務「テレワーク」を推奨している。近年は、出社しても、メールで報告を受けたり、指示を出したりすることが多い。それなら何も何時間もかけて出社しなくても、自宅のパソコンでもできるはずだ。

しかし従来は、会議はパソコンでは済ませられなかった。ところが最近、これを可能にする「ビデオ会議」システムというものが現れた。いわば、遠隔地にいる会議の全出席者をテレビ電話でつなぎ、誰でも他の出席者の顔を見ながら話ができるようにしたものだ。

こういうビデオ会議システムで、最近のコロナウィルスの波に乗って急激にユーザー数を伸ばしているものに、米国の「Zoom」というシステムがある。そのユーザー数は昨年(2019年)12月には1日当たり1,000万ユーザーだったが、今年4月には3億ユーザーになったと報じられてている(1)。4か月で40倍に成長したわけだ。

これはビデオ会議システムの一例にすぎないが、こういうビデオ会議はどういう会議に使われているのだろうか?

G7からクラブ活動の打ち合わせまでビデオ会議に

ビデオ会議システムは従来からあったものだが、今年になってコロナ騒ぎで物理的に集まることが困難になったため、急に脚光を浴びるようになった。

3月には世界の首脳が集まるG7にビデオ会議が初めて採用された。今後のG7にもビデオ会議が提案されている(2)

同月(*1)IOCのバッハ会長と日本のオリンピック組織委員会の森会長の会談がビデオ会議で実施された(3)

詳細は分からないが、一般企業、官庁、学校関係等の組織内や組織間の会議にも相当使われてていることと思われる。

また、学生のクラブ活動や同じ趣味の人の同好会等の会合でも使われているようだ。

こういう会議とは別に、テレビのニュース番組やワイドショーで、自宅や遠隔地にいるゲストやコメンテータがビデオ会議システムを使って参加することが、コロナ以来急激に増えている。

ビデオ会議にもいろいろ

IT関係の各社は、ライブ・ビデオ映像をパソコン間で交換する道具をいろいろ提供してきた。

Googleは2011年から、Google+とかHangoutsという名前で、ビデオ会議の機能を提供してきた。

Skypeと、同社を買収したマイクロソフトも、2013年以来同様のサービスを提供してきた。マイクロソフトはそれを同社のOffice 365というクラウド型の文書管理システムに含めて提供し、1グループ内での文書の共有、共同作成に便利なものにした。

一方、Zoom Technology Communicationsが2011年に提供を始めたZoomは、あくまでもビデオ会議用に作られたもので、その他の機能については第三者のソフトを活用するようになっている。操作の簡便さと、100人以下で、40分までの会議は無料という点が歓迎され、コロナで外出禁止という波に乗って、今年初めの4か月で利用者が40倍になった。

Facebookにも類似の機能が前からあったが、このようなZoomの趨勢を見て今年4月にMessenger Roomsという新サービスを発表した。これは50人までなら時間制限なしで使える。

Zoom以外は前から広く知られている大企業だが、最近爆発的に利用者を増やしているZoomとはどういう企業なのだろうか?

Zoomの創業者は中国人

Zoomの創業者は1970年に中国・山東省で生まれた袁征(ユアン・チョン)という中国人である。山東科技大学卒業後、1997年に渡米した。渡米に当たっては9回ビザを申請してやっと認可されたそうだ。米国ではEric Yuanという名前を使っている(4)

米国でCisco Systemsなどでビデオ会議システムの開発に従事した後、2011年にZoom Video Communicationsを設立しCEOになった。Zoom社は2019年に株を公開し、Yuan氏は一躍ビリオネアの仲間入りをした。2020年版のForbesのリストでは同氏の資産は55億ドル(約6,000億円)で、世界293位ということだ(5)

Zoomは近年急激にユーザーが増加したしたため、信頼性の確保が追い付かず、セキュリティー、プライバシーの面で問題があると言われている。同社もそれを認め、現在信頼性の改善に努めている。従って、この問題はいずれ片付くと思われるが、使用に当たっては当面充分な注意が必要なようだ。 

日本の現在の使い方はまだ「原始時代」?

企業や学校などでのビデオ会議の現在の使用実態は私には分からない。しかし、最近コロナ騒ぎが始まってから、テレビの報道番組等で急にビデオ会議を目にすることが増えたため、現在の使われ方の一端をうかがい知ることができる。それによると、今年になって急に始まったためだろうが、番組の制作者も出演者も慣れてないため、使い方が不適当な例が多いようだ。一例を挙げると;

・ 画像が粗く、色も悪いものがある。・・・最近はスマートフォンでも高画質の映像の撮影ができ、ブロードバンドを使えばその伝送もできるので、被災地の現場等からならいざ知らず、出演者の自宅や滞在先のホテルからならもっとましな映像を送れるはずだ。

・ 照明が適当でなく、顔が暗すぎるものが多い。・・・背後に窓がある場所等は相対的に顔が暗くなるので避けるべきだ。

・ 出演者が下を向いて、(特にコロナ問題などの時は)硬い表情で話しているため、取調べ中の容疑者のような印象を与える。・・・ カメラは(パソコンと一体の時はパソコンごと)出演者の目と同じ高さに置き、出演者はカメラ(つまり他の出席者の目)を見て話すようにするべきだ。

・ 背景はシンプルな方がよい。・・・自宅でインタビューを受けているのではなく、遠隔地から「会議」に出席しているのだから、背景に書棚等を写すのはまったく無意味だ。

米国の方がまだ少しはビデオ会議の歴史があるようで、ビデオ会議の設定者、出演者の対する細かい注意を説明したビデオをYouTubeで見ることができる。チョットした撮影方法に違いでどれぐらい見栄えが違うかを若い女性が懇切丁寧に説明してくれる。顔の明るさが足りない時にカメラのそばに置く補助照明等の紹介もある(6)。しかし、私が一番感心したのは、この女性のプレゼンテーション力の高さだ。そして、それをもたらした米国の「プレゼンテーション文化」の奥の深さである。

ひるがえって、日本のテレビで写されるビデオ会議を見ると、日本のビデオ会議はまだ「原始時代」のように思われる。しかし、ビデオ会議の実用化は全世界でまだ始まったばかりだ。コロナ問題を好機としてとらえ、この新技術をいかにうまくわれわれの社会に取り込むかがわれわれに課せられた課題であろう。

(*1) 訂正1(20/5/5)

 

[関連記事]

(1)  "Zoom grows to 300 million users despite security backlash",

(2)  "Exclusive: Trump cancels G7 at Camp David over coronavirus, to hold video-conference instead", March 20, 2020, Reuters

(3)  "Tokyo 2020 statement regarding IOC Executive Board announcement", 23 Mar 2020, tokyo2020.org

(4)  "The Inspiring Backstory of Eric S. Yuan, Founder and CEO of Zoom", Oct. 3, 2017, Medium

(5)  "World’s Billionaires List", 3/18/2020, Forbes

(6)  "How To Look Good on Video Calls for Zoom FaceTime Skype", Mar 31,2020, YouTube  


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