Yahooのアカウント情報流出、日本に影響なし?
酒井ITビジネス研究所 酒井 寿紀 2017/10/20
全世界で30億件のアカウント情報が流出
今年10月3日から4日にかけて、Yahooのユーザーアカウントが30億件流出したと全世界で報道された(1)。日本でも10月4日の夕刊で、「米ヤフー、30億件流出、日本に影響なし」等の見出しで大きく報じられた(2),(3)。しかし、この「日本に影響なし」は本当だろうか? まず、何が起きたのかをみてみよう。
ユーザーアカウントの流出を発表したのは、今年6月米国のYahooを買収したベライゾン・コミュニケーションズである。流出したのは、日本Yahooのユーザーを別にして、世界中のYahooユーザーのアカウント30億件だという。このアカウントの、名前、メールアドレス、電話番号、生年月日、パスワード等が2013年に盗まれ、その被害が全ユーザーにわたることが今回判明したというのだ。
Yahooのアカウント管理は?
Yahooには、米国のほか、例えばイギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア、シンガポール、香港、台湾等の国の言語と内容に対応したウェブサイトがあり、全世界の人が使っている。そして、ログインが必要なサービスについては、米国Yahooのアカウントが、日本Yahooを別にして共通に使える。
これは、日本以外の国のYahooサイトのドメイン「xx.yahoo.com」が、米国Yahooのドメイン「yahoo.com」のサブドメインになっていて、米国Yahooが一括してアカウントを管理しているからだ。一方、日本Yahooのドメインは「yahoo.co.jp」で、米国yahooのサブドメインではない。
従って、影響がないのは日本Yahooのユーザーだけだ。日本Yahooのユーザーは、外国人であろうと、地球上のどこの住んでいようと影響がない。しかし、それ以外のYahooのユーザーは、日本に住んでいる日本人も含めて、全員影響を受けることになる。
英語のウェブサイトを利用している人は世界中にいる
小生は、米国企業の株価や企業情報を調べる時に、米国Yahooのファイナンス情報を使うことが多い。米国Yahooのアカウントに銘柄を登録しておけば、いつでも米国企業の株価をチェックできる。
米国Yahooのサイトだけでなく、米国Yahooのアカウントでイギリスや香港のYahooサイトを使って、現地の上場企業の情報を入手している人は世界中にいると思われる。日本にも、このような目的のために米国Yahooのアカウントを持っている人は多いだろう。
外国のサイトを利用するのは投資情報に限った話ではない。インターネットの世界では、英語が事実上の共通言語になっている。そのため、英語圏以外の国の人にも、英語のウェブサイトを利用している人が多いと思われる。 利用者が多ければ品質が向上する。例えば、Wikipediaというウェブ上の無料の百科事典があるが、科学技術や外国の地理・歴史については、日本語版より英語版の方がはるかに情報量が多く、内容も洗練されている。これは、英語版の利用者の方が、日本語版の利用者より10倍以上多いと多いと思われるため、致し方ないことだ。
「日本に影響なし」とは言えない!
こういう状況なので、日本にも、米国Yahooのアカウントを利用している人が大勢いると思われる。これが現在のインターネットの活用状況の実態である。
従って、 米国Yahooのアカウント情報流出が「日本に影響なし」とはとても言えない。報道機関には、インターネット活用の実態をもっとよく知ってもらう必要があるようだ。日本のヤフー株式会社のコメントを伝えるだけでは、日本への影響を正しく伝えたことにはならない。
[関連記事]
(1) "All 3 Billion Yahoo Accounts Were Affected by 2013 Attack", The New York Times, 2017/10/3
(2) 「個人情報30億件流出 米ヤフー、13年の被害 日本に影響なし」、日本経済新聞、2017年10月4日夕刊
(3) 「米ヤフー 流出30億件分 全利用者の個人情報か 2013年 日本は影響なし」、朝日新聞、2017年10月4日夕刊