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16年振りに「Word」、「Excel」をアップグレードしたら・・・

酒井ITビジネス研究所   酒井 寿紀    2017/09/21 

16年間ほとんど問題なく使えた

私は元々悪筆な上、加齢とともに字が乱れて、自分で書いた字を自分でも読めなくなったため、手紙の類はすべてマイクロソフトの「Word」に頼っている。そして、最近まで毎月書いていた雑誌の記事も、いつも「Word」で書いて編集者にメールで送っていた。

また、私が幹事役を引き受けているいくつかの会合の名簿の管理には、マイクロソフトの「Excel」を使っている。その他、わずかな資産も「Excel」で管理している。

私がごく最近まで使っていたのは、2002年版のWordやExcelである。2001年にリリースされてから16年になるが、私の上記のような使用目的には全く問題なかった。

ところが、最近友人などから送られてくるWordやExcelのファイルは、ファイル形式が新しい「docx」や「xlsx」のものがだんだん増えてきた。私が使っていたWordやExcelは「doc」や「xls」の古いファイル形式のファイルしか扱えないので、そのままでは受け取ったファイルを開けない。

しかし、この新ファイル形式のファイルは、マイクロソフトが無料で提供している「Word Viewer」や「Excel Viewer」を使えば閲覧できるので、たいして困ることはなかった。

ところが最近、新ファイル形式で文書を送ってきて、それに必要事項を書き加えて返信してくれという依頼が何件か現れた。これも何とかごまかしてきたが、これは本来新バージョンを使わないと対応できないものだ。

そして、2001年にWindows XPと同時にリリースされた2002年版は、5年後の2006年に正規のサポートが終了し、10年後の2011年には延長サポートも終わっているので、そろそろ新バージョンへの切り替え時期だと思っていた。

現在のWordやExcelの最新版は2016年版で、この間にマイクロソフトは、2003年版、2007年版、2010年版、2013年版と、四つのバージョンをリリースしている。従って、2002年版から2016年版に切り替えれば、これら4バージョンをスキップすることになる。このうちの2007年版で、マイクロソフトはファイル形式を変更し、ユーザインタフェースも大幅に変えた。

私がバージョンアップを頑なに拒否してきたのは、カネをケチったためもあるが、「実用上支障がなければ、いたずらに新バージョンに切り替えるべきではない」という、長年の経験からの信念による。そのため、WordやExcelだけでなく、会計ソフトや宛名印刷ソフト等も、必要に迫られない限り古いソフトを使っている。これは、新バージョンに切り替えた途端、操作方法が変わり、今までできたことができなくなり、処理時間が長くなるという苦い経験を何回も繰り返したからだ。

そのため、2002年版を今後も使い続けるという選択肢も考えられたが、今回一大決心(?)をして、切り替えることにした。この切り替えについては、何せ4バージョンもスキップしたので、ある程度のトラブルは覚悟していたが、その結果はどうだったろうか・・・

新バージョンで問題多発!

まだ切り替えてから1か月ぐらいしか経ってないので、今後どんな問題に出くわすのか分からないが、ここでは私が大きな問題だと感じたことを2件取り上げよう。

旧ファイル形式が使えない?

今までの私のように、旧ファイル形式しか扱えないWordやExcelを使っている人がまだいると思われる。そのため、作成・配布するファイルは、まだ当分の間旧ファイル形式の方が親切だと思われる。

ところが新バージョンでは、新規に作成するファイルが自動的に新ファイル形式になる。それは当然としても、初期設定を旧ファイル形式に変更する方法が分からない。ウェブを検索して、やっとその方法が見つかった。最近のソフトにはマニュアルがないので、分からないことがあると、何でもウェブで検索することになる。

そして、旧ファイル形式で、Word文書にヘッダーを追加しようとしたが、これがうまくできない。詳しく調べたわけではないので、細かい条件は分からないが、文書の上部の左/中央/右の3か所にヘッダーを配置しようとしても、全部左に寄ってしまうことがある。新ファイル形式では起きないので、旧ファイル形式固有の問題のようだ。

「新機能を使うためには新ファイル形式を使う必要がある」というのは当たり前だが、「新バージョンで昔からある機能を使うことができない」というのはソフトウェアのアップグレードの常識に反する。

「新しいバージョンで作成したファイルも扱えるよう、新バージョンのソフトを用意しておく。しかし、旧バージョンのユーザにも扱えるよう、ファイルの配布は原則として旧ファイル形式で行う」というのがコンピュータの使い方の鉄則である。しかし、マイクロソフトの製品では、この鉄則が実行できないようだ。

マイクロソフトが意図的にこうしたとは思えないので、これはバグかもしれない。新バージョンで旧ファイル形式の文書を作成する人が少ないので、あまり問題になってないのかもしれない。また、2007年版以降のどのバージョンにこの問題があるのかも分からない。

仕方がないので、上記の鉄則の実施を諦め、WordやExcelの文書は、今後すべて新ファイル形式で作成・配布することにした。

まるで浦島太郎!

従来のWordやExcelでは、画面の上部に「メニューバー」があって、作業をする時の道具が、「ファイル」、「編集」等の分類の下に並べられていた。例えば、「ファイル」を開けば、「上書き保存」、「名前を付けて保存」、「印刷」などの道具が並んでいた。 そしてよく使う道具は、「ツールバー」にボタンを置いておけば、いちいち「メニューバー」を開かなくても、ワンタッチで作業を指定できた。

しかし新バージョンでは、従来の「メニューバー」が「リボン」というものに変わり、メニューが格段に増えて、分類も変わり、どの道具がどこにあるのかさっぱり分からない。

先ず、Wordの文書を作ろうとしたが、用紙サイズをどこで指定すのか分からない。リボンの中を散々捜しまわって、やっと見つかった。

次に、ヘッダーにファイル名と日付を記入しようとしたが、これもどこでどう指定したらいいのか分からない。これもどうにか分かったが、日付・時刻の表示形式は17通りも用意されているにもかかわらず、例えば今日なら「2017/9/20」という、私が従来使ってきた表示形式が見当たらない。

従来と同じようなことをやろうとしているのに、どうしたらいいのか、さっぱり分からない。まるで龍宮城から戻った浦島太郎みたいだ。昔の村に戻って、昔と同じように暮らしたと思っても、村がすっかり変わり果てていて、どうしたらいいのか途方に暮れてしまうのだ。

メニューが増えれば、「メニューバー」を「リボン」のようなものに拡大するのはやむを得ないだろう。しかし、その場合、従来の分類や用語は極力保持して、その延長上に機能を追加し、従来のユーザがまごつかないようにするべきだ。マイクロソフトは従来のユーザにとっての利便性を軽視していると言わざるを得ない。

マイクロソフトがWordやExcelのファイル形式やユーザインタフェースを大幅に変更したのは2007年版からだ。その後、同社は2012年にWindows 8をリリースして、従来のユーザインタフェースを大幅に改め、「メトロスタイル」というタイルを並べたようなスタート画面に変更した。しかしこれは大変不評を買ったため、翌年Windows 8.1をリリースしてWindows 8のユーザに無料で配布し、従来のデスクトップを復活した。

私は「メトロスタイル」の不評をリリース前から聞いていたので、8.1が安定するのを待って2014年にWindowsをアップグレードした。現在も私は、旧来のデスクトップ画面しか使っていない。Windows 7以前にできたことができないので、しょっちゅう不便を感じながら・・・

このようにマイクロソフトはユーザ軽視の施策を繰り返しているので、今後も注意が必要である。これも「一強」の弊害の一つであろう。


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